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なぜスピッツの「冷たい頬」はすごい曲なのか~スピッツ歌詞解釈~

  • 2021年4月21日
  • 読了時間: 8分

更新日:3月7日




こんにちは、八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「冷たい頬」について解釈していきたいと思います。

この曲の詞の意味としては、「初恋クレイジー」とよく似ているかもしれません。「相手のことめっちゃ好きだけど、相手は自分のこと何とも思ってない」という状況を詞にしてるんじゃないかなと、私は思っています。

この頃のマサムネさんは、たびたび、こういうテーマで詞を作ってきました。とはいえ「冷たい頬」はシングルカットの曲、いわばスピッツにとって勝負曲になる、大事な曲なのです。その大事な曲を、「うじうじしていたせいで、彼女とは結局何も起こってません」という内容にする大胆さ。心の弱さを堂々とさらけだす、心の強さ。これはもう天才としかいいようがないですね!

すみません先走りすぎました。

でも大丈夫です。結論を先に言っちゃいましたけれども、詞の内容がとにかくすごいので、飽きることなく全部に目を通せると思います。

詞の内容をゆっくり眺めながら、この詞がどういうものなのかを、順番に見ていきましょう。




「あなたのことを深く愛せるかしら」

子供みたいな光で僕を染める。

この部分は、「あなたのことを深く愛せるかしら」って好きな子に言われてみたいと思っている、僕の子供じみた妄想です。「深く愛せるかしら」と子供はいいませんし、子供は誰かを愛することがどういうことなのかを知りません。この詞が成立する条件があるとすると、大人びている君と比べて、僕はまだ子供の思考をしている年齢だということです。中学生か、高校生ぐらいを想定しているのだと思います。僕の頭の中は、君に恋をしたせいで、子供みたいな妄想でいっぱいになってしまっているということですね。



風に吹かれた君の冷たい頬に

触れてみた小さな午後

会話をしていたり、面と向かっている人の頬は、暖かいのです。あるいは、暖かくしようと意識しているはずです。チークが明るい色なのは、そのためですね。

頬が冷たいのは、君が、誰とも向き合っていない状況だからです。つまり僕は、君に相手にもされていないという状態なのです。たとえば、君と僕は同じクラスメイトというだけで、名前は知っているけれど、会話をしたこともない、みたいな、そんな感じです。

僕は君をすごく意識していて、「深く愛せるかしら」って言われたいと願っているぐらい、強く好意を寄せているけれども、君はそうではありません。「えっ、何? 何か用?」みたいな、突然話しかけられたらビックリしちゃうぐらいの薄い関係なのだと思います。

なので、触れてみた、というのは、僕の完全な妄想です。のちにでてくる、「壊れながら君を追いかけてく」ぐらい君のことが好きであるなら、その君の頬に触れるというのは、本来なら大事件ですよね。小さな午後ではなく、大きな午後になるはずです。でも、曲が、そこであっけなく、さらっと終わってしまっている。やはり触れてみたというのは、僕が彼女に対して、すでに何十回、何百回と行ったであろう、妄想のうちの一つにすぎないのだと思います。



諦めかけた楽しい架空の日々に

一度きりなら届きそうな気がしてた

ここですね。僕は君との楽しい日々を妄想してたけれど、ただの一度も、そんな日々が来なかったんですね。うーん私の高校時代みたいで、心当たりがありすぎるので、胸が苦しくなる一節です。



誰も知らないとこへ流れるままに

じゃれていた猫のように

ここもまた、架空の日々の内容です。

それにしても、君と、猫のようにじゃれたいと思うのはいいんですけど、それを初対面に近いぐらいの人に対して妄想しちゃうのは、すごく恥ずかしいですね。もし彼女に、こんな気持ち悪い妄想をしていると知られたら、どうするつもりなんでしょう?

特に意識もしていない男子からいきなり「君と、誰も知らないところで、猫のようにじゃれあいたいと思ってました」と言われたら、ドン引きしちゃうと思います。マサムネさんは爽やかに歌い上げているので、みんな、なんとなく感動しちゃってるかもしれませんが、実はめちゃくちゃ危なっかしい妄想なんですよね。

そういう、ドン引きされちゃうような妄想を、臆することなく、ぶちかましてくるのがすごいんです。

そう。この詞のすごさは、青春の恥ずかしさを、あえて真正面に据えてモロだしにして、覆い隠さないところにあるのです。



ふざけすぎて恋が幻でも

構わないといつしか思っていた

ここは、私が高校時代に思ってたことと、まったく同じです。私が、冷たい頬の僕と完全にシンクロしてた時期がありました。好きな女の子のまえで、大げさにバカなことをしちゃうんですよ。気を引きたい一心で。

当然笑われます。君に笑ってもらえると、とんでもなく嬉しいんですよね。でも同時に、こんなバカなことをしている僕を、君は好きになるはずがないんですよね。

でも、君に注目して欲しいという気持ちが強くて、恋が幻になったとしても、それでも構わないと…そんな簡単に諦められるわけではありませんが、それでも、笑わせることができたら、他にどうすることもできないし、勇気もないし、今はそれでもいいかなと。



壊れながら君を追いかけてく

近づいても遠くても知っていた

そうやって、君の前で愚かなバカを演じてる僕。君にとっての僕は、まさに壊れている人という感じでしょう。

壊れていることしかできないけれど、それでも僕は君を追いかけていってるんです。君が近くにいても、遠くにいても、僕はしっかり君を見ています。意識しています。



それが全てで何もないこと時のシャワーの中で

さきの節で「知っていた」と言ってましたけど、実はそれは勘違いです。僕は君をずーっと見ているので、君のことはなんでも知っているはずだと思い込んでいるのかもしれませんが、見ているだけでは、なーんにもわかりません。当然ですね。僕の「知っていた」ことなんて、何もなかった、ということに、ある時気が付いたんでしょう。

この「時のシャワー」っていうのは、この僕と君との関係は過去のものであると言いたいのかなと。のちに「手帳の隅で眠り続けるストーリー」とは、僕が君に恋をしていた時期のことを指しているのだと思います。どちらも、時間経過を感じます。

結局このまま、僕はただただ妄想し続け、または悩み続けるばかりで、君に何かアプローチをすることもありませんでした。ただのクラスメイトという薄い関係のまま、そのまま卒業を迎えて、離れ離れになって今に至ります、という感じだと思います。



夢の粒もすぐに弾くような

逆上がりの世界をみていた

夢の粒…こうやって妄想している、たとえば君の頬に触れてみたら、どうなるんだろう、とか、そういう願望のことを表しているのだと思います。

そして逆上がりの世界というのは、実現できない世界のことを言っているんだと思います。つまり、君と交際をすることですね。君と交際さえできちゃえば、こんな妄想すぐに弾け飛んでしまいますよね。だって、じかに触れることができちゃうんですから。頬に触れたらどうなんだろう、とモヤモヤしなくてもよくなります。



さよなら僕のかわいいシロツメクサと

手帳の隅で眠り続けるストーリー

風に吹かれた君の冷たい頬に

触れてみた小さな午後

先ほどもちょっと触れましたが、このストーリーにサヨナラしています。この話は現在進行形ではなく、過去の話なのです。

最後に、君の冷たい頬に触れた時の妄想で、曲が締めくくられています。何も起こらなかった、起こせなかった未練のような何かが、漂っているように思います。




一番最初で述べたとおり、「冷たい頬」は、シングルカット曲です。スピッツが勝負をしかけた曲なのです。この、壮大に何もしなかったという内容の曲を、「空も飛べるはず」とか「チェリー」などの、最大の敵である自分自身にぶつけてみるという挑戦をしたんです。

「めっちゃ好きな子がいるんだけど、話しかけたりもできず、でも注目が欲しいから、ただバカを演じている臆病な僕」という内容で、勝負しようとしていたのです。

これが、めっちゃすごいと思うんです。普通の精神じゃないです。

「チェリー」や「空も飛べるはず」を越えたいと思うなら、もっと強くてカッコいい曲にしたいと思うのが普通です。ある程度親密な仲になっている子がいる前提で「好きだ」というセリフを吐く曲にしたほうが、世間にも認められやすいと考えるでしょう。

あるいは「応援歌」みたいなテイストにして「僕が寄り添ってるから大丈夫」みたいな内容でもいいんです。そのほうがウケます。

でも、「冷たい頬」は、マサムネさんは、違いました。本気の局面で、スピッツの「弱さ」を真正面からバーンと出してきた。

弱さを出せる、強さ。これにはビックリですね。なんという精神力なのかと。


考察がどこまであっているのかもわかりませんし、解釈は人それぞれですから、まるで見当違いなことを言ってるかもしれません。

でもまあ、こう考えると、スピッツの強さと、「冷たい頬」のすごさがよくわかるので、私はこの解釈が好きです。



冷たい頬、すごいですね。




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