農園たや様~循環型農業~

更新日:3月5日



農園たやさんについては、個人的に馴染みがありました。 私事ながら、母方の祖母が、たやさんのご両親と友人でして、母の家にいくと、 「たやさんから貰ったトマトがあるよ」 と祖母を通じておすそ分けをたくさん頂いていました。 たやさんのトマトは均一に赤みがあり香りが強く、表面を軽く触っただけで匂いが手に移ります。 太陽の光をたっぷり受けて、赤く熟れてから収穫した証拠です。 また仕事を通じてのお付き合いもありました。福井の青果業界で働くのに、たやさんの野菜たちは欠かせないものでした。

しらな、ベビーリーフ、わさび菜、ミニチンゲン菜...

福井市内のスーパーを利用なさっている方なら、これらの野菜のパッケージに印刷された農園たやさんのロゴをたびたび目にしていることと思います。 とはいえ、私は、たやさんと直接お会いしたことがありませんでした。 別の職場で働いていたときから、 「いやぁ~農園たやさんの野菜は土づくりからこだわっていて、うんぬん」 などと、問屋さん経由で聞きかじったニワカな情報を、まるで100年前から知ってますみたいな顔をしてセールストークをしてたわけですが、八百屋テクテクとして、たやさんの野菜を扱う以上は、農園たやさんのことをちゃんと知っておきたい...ということで、このたび農園たやさんにお邪魔してきました。 たやさんの作業場にテクテク歩いてお邪魔したとき、ちょうどミーティングの最中でした。農園たやさんでは、遠くインドネシアからの研修生を雇っています。 それは私も知っていましたが、私が驚いたのは、ミーティングが終わった時に出てきた彼らの瞳に宿る色でした。 ​ (なんでこんなに輝いているんだろう) それは久しくみたことのない、希望とやる気に満ちた輝きでした。 この不景気などによる社会不安のせいで、希望をもってイキイキと働く若い人は、この日本ではあまり見られなくなりました。 私も、誰かに雇われているうちは、死んだ魚の目をしながら仕事をしている人のひとりでした。 「インドネシアから来る彼らは、優等生です」 たやさんは私に、そう説明してくれました。 農園たやさんでは、インドネシアの学校で優秀な成績を収めた学生を、研修生として受け入れているそうです。 インドネシアにおける、研修先としての農園たやさんの人気は高く、能力の高い学生がこぞって農園たやさんを目指しています。 インドネシアからやってきたA君が研修を終えたのち自国に帰って農業経営を行い、それを見たB君が農園たやさんでの研修を目指して必死に勉強をして研修に来る、といった循環がおきているのです。 なるほどこれは、理想的な循環です。 日本の農業において、外国人研修生に対する対応が劣悪であることがたびたびニュースになります。 いやそうでなくても、例えばレタスやほうれん草の種まきから刈り取り作業を学習したところで、はたして外国人研修生が自国に帰った後、自立して農業を経営していけるのかが疑問でした。 「インドネシアの市場は閉鎖的で、新規参入はとても難しい。既存の市場は既存の会社が独占しており、それを咎める法律もまともに機能していないからです。その状況で新たに経営をしていくのは、日本人が考える以上にハードルが高いですね」 たやさんはこうおっしゃいます。 このような現状でも、しかしながら、過去に何人もの研修生を卒業させて、新規に事業を立ち上げさせているそのノウハウは、並大抵のものではありません。 はたして、たやさんのように研修生を育てることができる農園さんは、日本にどれだけあるでしょうか。 また、必死に勉強してでも行きたいと思わせる研修先が、日本にどれだけあるでしょうか。 話は前後しますが、私がたやさんに最初にお会いした際「農業における技術的なことは、たやさんのホームページから引用しますので、ここはひとつ、たやさんについてのお人柄について知りたいんです」とお願いをしました。 顔がみえる野菜ということを八百屋テクテクとしては目指していますので、人柄がとにかく伝わるような記事を書きたいと私は考えました。 ここまでは間違いではなかったと思います。 問題はそのあと私が、 「たやさんの考える、日本の農業の在り方について教えていただきたいのです」 とお願いしたことでした。たやさんは笑いながら「それ、販売に繋がるのかなぁ~」と難しい顔をしておりましたが、とにかく、私の希望に快く応えてくれました。 たやさんの話は、正直とても難解でした。 海外で農業指導を行ったこともあり、多くの知識と経験を積まれたたやさんと、かたや日本でノホホンと野菜だけを眺めてきた私とでは、知識の量に差がありすぎます。 おなじ土俵に立ってのお話がしばらくできずにいました。 たやさんは途中でふと私の様子を察してか、話をかみ砕いてくれました。 おかげで30分のインタビューの約束が1時間半になるという、とんでもないご迷惑をおかけすることになってしまったのですが...。 賢者というのは、相手の様子を察して話をします。 儒教の開祖で有名な孔子は、出来のよい弟子Cについては一言で教育を済まし、出来のそんなによくない弟子Dについては、この弟子のために多くの言葉を並べたとされています。 たやさんの顔をホームページで拝見したときは、シンガーソングライターのような気のいいお兄さんという感じだったのですが、実際にお会いしたときのたやさんは、経営者というオーラをまとっていました。 瞳からにじみ出る知性は並々ならぬものがありました。

たやさんは会話の端々に「循環」や「継承」という言葉をよく使います。 さきほどのインドネシアの研修生の話もそうですが、いい循環を作り上げるにはどうすればいいのかを常に考えているそうです。 またその循環を作りあげるにはどうすればいいかを、インドネシアの研修生にも、一緒に農園で働く若い人にも求めます。 どのような仕組みを構築するか。どのように技術を継承していくのか。 それがたやさんの経営の理念のようです。 「私の父から畑を受け継いだ時、約40年経っていました。その畑は40年経っても痩せることはありません。なぜなら、土づくりに重きを置いていたからです。この土づくりは私の父から継承しました。また私もこの土づくりを若い世代の人に継承しているので、農園たやの畑はこの先も痩せることがありません」 畑は、普通数年で痩せます。 作物が栄養を全部吸収してしまうからです。当たり前といえば当たり前ですね。 ですので、安定的に農業をするには、土づくりがとても重要になってくるわけですが、これがなかなか難しい。 日本の農業は後継者不足と言われています。 それは単に、若い人がドカンと大量に参入すれば、すぐに解決できる問題ではありません。 種さえまけば野菜ができるわけではないからです。 また土地が痩せてきたからという理由で化学肥料を使用したり、虫が来るからという理由で殺虫剤をまき散らせばどうなるでしょう。 確かに一時的にはいいかもしれません。一見すると丈夫で美味しそうな野菜もできるでしょう。 しかし、本来の土にはもう戻りません。その土にもともと住んでいた益虫を殺し、汚染された土地が残ります。 「農園たやでは、土づくりからはじまり、肥料を厳選することで、野菜にも環境にも優しい農業経営をしています。 またこれからの農業は、農業だけでなく、地域環境作りという点にも重点を置いて取り組んでいくべきだと考えています。 土づくりから始まり、環境づくり、人づくり。それらを含めた地域づくり。 いろんな分野における技術の継承があって、はじめて永続的で安定的な農業となりうると考え、それに基づいた施策を行っています


死んでも生き続ける人から、国家と人民のための大計が生まれる。


私の好きな歴史小説の一文ですが、私がたやさんを賢者だと思った理由のひとつは、これです。 まことに失礼なことながら、数十年後の未来にたやさんが天寿を全うされたとしても、農園たやさんでは今と変わらず、ミニチンゲン菜やベビーリーフを作り続けることができ、また多くの人々に支持され続けていることでしょう。

ここからは私の感想なんですけど、たやさんはこれらの話をなさった時、「循環型農業はあくまでも農家側の都合なので、販売のアピールにはならないんじゃないかな」とおっしゃいました。 確かに、お客様にアピールするには、直接的には関係のない話かもしれません。 循環型農業を行う上での、土づくりや低減農薬などの話は、野菜の出来に直結する話なのでアピールしたいところですが。 しかし八百屋テクテクでは、あくまでも、たやさんの人柄や熱意を見せたいという、この一点にこだわりたいと思っています。 たやさんの農業に対するひたむきさを、たやさんの野菜を求めるお客様に対して発信していくことこそが、八百屋テクテクの役割だと思っています。




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