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スピッツ「YM71D」は、ヤマダ電機の社員に向けたエール説。~スピッツ歌詞解釈~

更新日:2023年7月22日



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、謎の暗号と化しているスピッツの曲「YM71D」について解釈していこうと思います。

この、謎の暗号「YM71D」。アルバム「見っけ」に収録されている曲なのですが、発売時は曲のタイトルが先行して発表されたことで、この文字列の並びはいったい何なんだと、スピッツのファン界隈ではちょっとした話題にもなりました。歌詞を眺めるとわかりますとおり、この文字列は「やめないで」と読みます。なるほどね、「YM71D」は、やめないで、っていう意味だったんですね。


と、みなさんは、ここで解決したことにしていませんか?

もっと、深堀りしてみたくありませんか?


というのも、やめないで、と言いたいのなら、なぜタイトルを、「やめないで」にしなかったんでしょう? なぜ、あえて、「YM71D」と、よくわからない暗号のようにしてしまったのでしょう?

マサムネさんの歌詞を解釈してきて感じるんですけど、マサムネさんは、意味のない肉付けをしません。俳句や短歌と同じで、その単語ひとつひとつを吟味して、シナジーを持たせるようにしています。なので、最初の歌詞は全然意味がわからなかったけど、サビで、ああこういう意味だったのか、と繋がる仕掛けをつくることもあるし、逆に最初の歌詞で「この曲はこう読み取ってくださいね」とガイドナビしてくれる場合もあります。少ない文字数の中で、最大限の効果を作る。それがスピッツの歌詞なのです。

こういう背景を踏まえると、タイトルを「YM71D」と謎の文字列にしたのも、ただ「やめないで」と言いたかっただけ、とするのは、何か物足りない気がしてくるんです。


そこで、今回のブログタイトルになります。

「YM71D」は、「ヤマダ電機の社員に向けたエール説」です。


まず、この「YM71D」

アルファベットは、Y,M,Dとなります。

そして数字の71ですが、これをくっつけると、Aという文字になります。

このAを母音として、それぞれのアルファベットの後に並べると、YAMADAとなります。

YAMADAと、アルファベットで書く企業で思い浮かぶのは、そう、あの日本を代表する家電量販店、ヤマダ電機です。


いやいや、そんな無茶な、と思いましたか?

確かにこれだけだと、こじつけも甚だしいと感じるのも無理はないと思います。

でも、もう少しお付き合いください。

歌詞を丁寧になぞっていくことで、それらしい解釈ができることを、実際に見てみたいと思うのです。



誰かと一緒にいたいけど 誰でもいいわけじゃなく

演じてた君に恋して 素の君に惚れ直して

家電量販店に来たことを想定してみてください。売り場には、いろんな最新家電が並んでいて、いろいろ細かく特徴が書いてあるけれど、家電に詳しくない人にとっては、それはナメック星人のナメック語に思えることでしょう。何が書いてあるのか、さっぱりわからないし、どの家電が自分に適しているのか、さっぱりわからない。パソコンや冷蔵庫、洗濯機……どの家電も、そんなに安いものではないので、失敗したくないですよね。でも、こんな状況なので、一人では難しいですよね。誰か詳しい人と、一緒にいたいと、こういう場合は、心から願っちゃいます。

とはいえ、「誰でもいいわけじゃ」ないんですよね。無知な客に高いものを買わせようと目論む悪徳店員とかに絡まれたら、大変です。そういうのは、絶対に避けたい。

そこに現れたのが、親切な店員さんです。マサムネさんの要望をしっかり聞き取ってくれて、その条件に適う家電を勧めてくれました。ここでマサムネさんは思うわけです。「ああ、いい店員さんでよかったな。次もあの店員さんがいたら、聞こう」と。

そうして家電巡りを何度か続けるうちに、マサムネさんはこの店員さんと顔見知りになりました。彼女もまたマサムネさんに好印象を持ったようですが、そこは職場なので、あくまでも店員さんとして接していました。つまり、店員さんを「演じて」いたわけです。

そんな。客と店員の関係だったはずの二人ですが、ひょんなことから、彼女の素顔を、マサムネさんは目撃してしまいます。

彼女は悩んでいました。「仕事をやめたい」と。

マサムネさんは、どの部分に「惚れ直し」たのかはわかりませんが、たぶん「やめたい」ほど思い悩んでいる仕事でも、店員であるうちは職務をしっかりこなそうとする、そんな生真面目な性格に惚れたのだろうと思うんです。

タイトルのYAMADAと、この最初の2行から、ここまで読み取ったんですけど、この解釈はどうでしょう?

続きます。



平和だと困る街 駆け抜け

新しいヨロコビが ここにある

平和だと困る街、とは、戦争がしたくてしょうがない、という状態です。物騒ですね。

でも、これが家電量販店の話だとすると、この場合の戦争とは、競合同士の値下げ合戦というふうに読み取ることができます。

なるほど、一つの街に複数の家電量販店がある場合、価格競争になります。そしてその競争の恩恵は、しっかり消費者に還元されます。これは、活発に戦争が起こっていたほうがいいですよね。逆に、競合同士が平和的にカルテルを結んで、価格を釣り上げられたら、消費者は大変困ることになります。

家電においては、そんな熾烈な争いが起こっている街が、この歌詞の舞台であるようです。

そんな中、マサムネさんの、「新しいヨロコビ」とは、いったい何でしょう? まず、新しいヨロコビと言うからには、今までのヨロコビもあったはずです。これを上の歌詞から想像すると、今までのヨロコビとは、親切な店員さんのおかげで、いい家電が安く買えてホクホクできたことです。そして、この店員さんの苦悩を知り、一緒に寄り添える関係になったことが、「新しいヨロコビ」になった、ということなのではないのでしょうか?



やめないで 僕らまだ 欠片すら 手に入れちゃいないさ

初めては 怖いけど 指と指 熱を混ぜ合わせよう

uh... uh...

この流れを踏襲すると、サビの「やめないで」は、「辞めないで」と変換するのが自然でしょう。仕事を辞めないで、ということです。

少し前に見たファンアートで、このサビだけを抜き取った、ちょっとエロいイラストをツイッターで拝見したことがあります。なるほど、この部分は男女の交情しているシーンで、かつ男女のどちらかが「初めて」でした。そんな戸惑いの中で男性が動きを止めた際、女性が「やめないで」とお願いしている、と、このイラストを描いた人は解釈していたようです。なるほどなるほど。

この、いたいけなサビの部分が、ヤマダ電機説になると、どうなるのでしょう?

「僕ら」は、店員さんとマサムネさん、ではなく、スピッツのメンバーと解釈できるかもしれません。マサムネさんがメンバーに「いやあ、家電買うならあそこの店がいいよぉ。あの店員さんなら、いろいろ頑張ってくれるしさ~」「ふぅーん。ならちょうど買いたいものがあったから、今度覗いてみようかなぁ」とおすすめしていた直後に、彼女が「もう辞めますわ」宣言があったとしたら、「えっ、もっといろいろ買いたいものがあったけど、僕ら、その欠片すら手に入れてないよ?」という状態になりませんか。

「初めては……」の部分は、仕事のやり方に関するアドバイスのように思えます。彼女はしっかりしているけれど、まだまだお店に配属されたばかりで、経験が乏しい人だったんじゃないかなと。いろんな家電に、いろんなお客と、不安要素しかない仕事ですが、自分のところに来てくれたお客さんに対して、指と指を触れ合わせるように、熱を共有しあうように、親切に接客をしていけば、きっと道は開けるよ、となだめているシーンなんじゃないでしょうか。



反則の出会いなんだし 目立たぬようにしてたけど

きまじめで少しサディスティックな 社会の手ふりほどいた

2番では、店員さんの悩みについて、もう少し具体的になっています。

マサムネさんは、この店員さんとは恋人同士だなんてことには、なっていないと思います。だからこそ、深く入り込めないでいます。彼女に関しては、電気屋の店員さん以上の感情を持ってしまっているんですけど、だからといって、それを表に出すのは色々問題がある。だから目立たぬようにしている、という、ある意味宙ぶらりんな状態なわけです。

「きまじめで少しサディスティック」とは、マサムネさんと店員さんを取り巻く環境のことを、もっともよく表しています。店員さんは店員さんとしての役割以上のことができないし、マサムネさんもまた、同じです。家電量販店で二人がいきなり抱き合ったりすれば、大問題になっちゃいますよね。いや、抱き合うなんてことをしなくても、ちょっと個人的なことを雑談するだけでも、周囲は許してくれません。店員さんの上司がすっとんできて、「何をサボってるんだ」と説教がはじまるでしょう。二人が仲良くなるのを、周囲が厳しく制しているので、どんなに二人が惹かれ合っていても、まったく身動きがとれないわけです。

でも、そんな状況の中、「社会の手ふりほどいた」とあります。マサムネさんは、店員さんと、家電とは関係のない雑談を試みたわけです。この窮屈な社会に対して、ちいさな抵抗をしたわけです。



言霊を信じれば開けるでしょ

王様は裸です!と 叫びたい夜

「王様は裸です!」は、店員さんの悩みを一言で表現した、すごい言葉です。

そうなんですよね。王様とは、この店員が所属する家電量販店における王様、つまりヤマダ電機の社長を表しています。上に立つ人間というのは「2割の法則」というのがありまして、ひとつ下の現場からの情報が2割しか感知できないというものです。部長は、課長の2割程度、課長は係長の2割程度、となりす。社長までの階級が6段階あったとすると、2割×2割×2割×2割×2割=3毛となります。毛、って久しぶりに使ったので、一瞬なんだかよくわからないですけど、割、分、厘の、もう一つ小さい単位が毛となります。数字に表すと0.0003です。

つまり社長ともなれば、現場の状況のほとんど何も知らないし、わからないということです。そんな社長からの指示など、現場の状況を無視したものになるに決まっています。きっと、あなたがこのブログを読んでいるこの瞬間にも、現場で働く社員にとっては辟易するような指示が飛び交って、現場を混乱させていることでしょう。これでは「王様は裸です!」と言われても仕方ないですよね。

このブログを書くにあたり、ヤマダ電機の公式ユーチューブをいくつか拝見させていただきましたが、そこのコメント欄において、現場で働いている社員の鬱屈した声を、いくつも見ることができました。量販店というのは昔からパワハラ、セクハラ体質ではありますが、現場の何も知らない人間からの、パワハラまがいの指示が飛んできたとしたら、そりゃあ辞めたくもなりますよね。



やめないで 長すぎた 下りから ジャンプ台にさしかかり

マグレにも 光あれ どこまでも 跳べるはずさ二人

uh... uh...

サビです。すぐ前の「言霊を信じれば開けるでしょ」にかかっています。総じて、仕事を辞めないよう、応援している部分ですね。

パワハラにまみれた、評価されない、報われない現場で働くというのは、長い坂を下っているような気分になります。真面目に働けば働くほど、どんどん気分が落ちこんでいきます。

「そんなに嫌なら、辞めちゃえば?」と、普通の人ならそう言いたくもなるでしょう。状況にもよりますが、辞めたほうが正解の場合だって、そりゃああるでしょう。

でも、辞めないほうがいい場合、どうアドバイスすればいいんでしょう? 今回の店員さんの場合は、いろいろ考えた結果、仕事を続けたほうが長い目でみたときに正解だと、マサムネさんは考えました。なので、続けていけるよう、アドバイスしています。

「ジャンプ台から大きく飛躍する場合、長い下り坂が必要なんだよ。今はひたすら下っている気分かもしれないけれど、大きく上昇するための助走だと思って、頑張ってみたらどうかな? 今は、このアドバイスに何の根拠も感じられないかもしれないけれど、僕の言霊だと思って、信じてみないかい?」と。



という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?

今は、嫌なことや理不尽なことがあったら、すぐ辞めるのが正解だという認識が浸透しつつあります。そんなところで我慢しても、いいことなんて一つもないですからね。

難しいのが「嫌なことも沢山あるけれど、我慢したほうが、いい未来が見えそう」な場合です。この場合、下り坂を転がっていくような感覚に、じっと耐え続けなければいけません。そのモチベーションを、どうやって保っていけばいいのでしょう?

マサムネさんは「下り坂が長ければ長いほど、遠くにジャンプできるよ」と言っていますが、これは現実問題に即したアドバイスではなく、いわばレトリックでしかありません。「悪いことの先には、きっといいことがあるよ」的なことしか、言えないんですよね。

でも、その言霊を信じれば「開ける」とも言い切っています。

どちらかといえば、マサムネさんは、店員さんに対しては、占い師のような立ち位置を目指していたのかもしれません。占い師の発言には、なんの根拠もありませんが、人を勇気づけたり、元気にさせたり、することができます。ひとによっては、こういうアプローチも大事なんですね。

このように、この曲もまた、マサムネさんの繊細な心遣いが伺えます。「YM71D」は、難しい課題に立ち向かう心構えを、教えてくれている曲なのかもしれません。




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