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スピッツ「ニノウデの世界」にみる、マサムネさんのロック魂



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「ニノウデの世界」について解釈していきたいと思います。

この詞は、マサムネさんの心の中をイメージした曲だと思います。えっ、そんなの全部の曲に当てはまるじゃないか、ですって? うーん。そうですね……。

説明が、ちょっとザックリしすぎました。申し訳ございません。

この曲は、マサムネさんが自分の曲を手掛ける際、どんなことをイメージして作っているかを表現した曲なのだと思います。曲作りについての曲、といいましょうか。そういう感じだと思います。


といいますのも、この頃のマサムネさんは、ロックであることに憧れを抱いていたわけですが、ロックって、みなさんどんなイメージですか? 反骨精神とか、反体制とか、反戦争とか、そんな感じでしょうか。昔のロックは、そういう深いメッセージ性が歌詞に込められているものが多かったのです。マサムネさんが目指した方向性の先に、ブルーハーツがいたわけですが、彼らが発表した「青空」は、南アフリカ共和国における人種隔離政策、アパルトヘイトについて描かれているとされています。昔のロックンローラーには、自分の前に立ちはだかる壁に対して、無理やり腕力でぶち破っていくような、そんな力強さがあったわけです。

愛についても同様です。ロックンローラーなら男らしく、女は腕力で手に入れる、みたいな主張をすることがあります。なまぬるい愛なんて、まっぴらごめんだ、とか、そういうことを歌っていたわけです。いやむしろ逆に、あえて紳士的にすることによって、ギャップに惹かれる構造になっている場合もあります。とにかく、ロックが内包している主張の激しさを、最大限利用するような曲になっているわけです。


一方で、我らがスピッツのマサムネさん。マサムネさんもまた、ブルーハーツと同じように、アパルトヘイトについての詞を描くような、世の中に対して激しく主張をするロックバンドを目指していたのでしょうか、と問われると、私たちスピッツファンは「違う」と答えることができるでしょう。マサムネさんの描く世界観をよく見聞きしている私たちなら、彼が思い描きたいと思っている世界がどのようなものであるかを知っているはずです。

そんな、マサムネさんの内面を表現したのが、この「ニノウデの世界」だと思うのです。

詞を順番に眺めていきましょう。




冷たくって柔らかな

二人でカギかけた小さな世界

かすかに伝わってきて

縮んで伸びてフワリ飛んでった

詞の最初の2行で、マサムネさんの世界を一言で言い表しています。「冷たくって柔らかな 二人でカギかけた小さな世界」です。

これを逆にすると、「熱くて固い、世界中のみんなに開かれたデカい世界」になります。これはまさしく、正統派ロックを表しています。ロックンローラーが目指すべき場所は、まさにこういう世界なのです。

でも、マサムネさんは、それとは真逆な世界を表現しようとしています。正統派ロックを志す人から見たら、「なんて不純なんだ!」と怒られるかもしれません。「お前なんかロック(固い)じゃない!」と、怒られるかもしれません。

でもマサムネさんは、それが自分のスタイルなんだ、と主張しています。スピッツはこれ以降「冷たくって柔らかな 二人でカギかけた小さな世界」をずーっと表現し続けてきました。君と二人で自分たちの世界に閉じこもって、二人で愛を語らうような曲を、頑なに発表し続けてきたのです。ブレないでやり続けているのは、それはそれで、ロック(頑固)だと思います。

ただ、やっぱりロックンローラーの同業者からの視線が気になります。現代に比べてもロックの正統性が重要だったこの時代のことですから、「スピッツがロックだって? ロックをバカにしているのか!」と、ロック原理主義者からは、さぞ怒られたことでしょう。あのクイーンでさえ、批判の的だったのです。クイーンよりもさらにスピッツのほうが、曲に対する態度としては、柔らかで緩いのです。彼らの怒りを買うには、十分だったでしょう。「スピッツって、Jポップミュージシャンだよね」と、これからさんざん言われることになっていくのですが、それらの中には、侮蔑の意味を込めたものもあったでしょう。

こうして、二人だけの世界に閉じこもっているにも関わらず、その隙間から「かすかに伝わって」くる世の中のご意見について、マサムネさんは「縮んで伸びてフワリ飛んでった」という態度でいます。コンニャクみたいに、ビヨ~ンと縮んで伸びて受け流し、バインバイーンみたいに飛んで逃げていくようです。



タンタンタン それは僕を乗せて飛んでった

タンタンタン それは僕を乗せて飛んでった

「タンタンタン」は、軽やかな音です。従来のロック音楽からイメージできる音にしてみれば軽すぎる音ですが、マサムネさんはあえてこの軽い音を選んだ、という意味を表したものかもしれません。

その後に続く「それは僕を乗せて飛んでった」は、まるで何かから逃げていくイメージです。「それ」とは、これまで解釈してきた内容から判断すると、自分たちのロック音楽ということになります。自分たちスピッツは、自分たちの曲の上に乗って、口うるさい正統派ロックが好きな勢力から逃げ出していく様子を描こうとしていたんじゃないかなと思います。

冷たくて柔らかな、コンニャクみたいな曲の上に乗る、マサムネさん。「タンタンタン」と跳ねながら飛んで逃げていく様子を想像すると、ちょっと面白いですね。



ああ君の そのニノウデに

寂しく意地悪なきのうを見てた

窓から顔出して

笑ってばかりいたら こうなった

私は、先ほどはスピッツの曲をコンニャクに例えましたが、本当はこの詞のタイトルにあるとおり、「君のニノウデ」に例えたかったのだと思います。でもそれではニノウデだけを包丁で切り出したグロテスクなイメージになってしまうのと、解釈をわかりやすくするために、コンニャクに置き換えました。でもここから先は、「君のニノウデ」に置き換えてみましょう。君の、柔らかくて冷たいニノウデに小さなマサムネさんが寝そべって、君のことだけを考えた曲を歌っている。そんなイメージです。

小さいマサムネさんは、君のニノウデの中に寝そべっているくせに、腕の持ち主である君に対して「寂しく意地悪な」曲を昨日作って歌い、君を困らせました。しかも服のすき間からマサムネさんは顔をだして、君が困っている様子を眺めながら「笑ってばかりいた」そうです。めっちゃ楽しそうですね。でもこの先のマサムネさんがどうなるか、わかりますよね。



タンタンタン そして僕はすぐに落っこちた

タンタンタン そして僕はすぐに落っこちた

「そして僕はすぐに落っこちた」そうです。意地悪された仕返しに、君に振り落とされたのです。振り落とされて、地面に落ちた音が、「タンタンタン」だとしたら、コミカルです。小さなマサムネさんが、バウンドしながら転がっていく様子が思い浮かびます。



しがみついてただけのあの日

おなかのうぶ毛に口づけたのも

思い出してはここでひとり

煙の声だけ吸い込みながら

ここは、小さいマサムネさんが君のニノウデにつかまって、君の為だけに歌を作っていた頃を思い出している部分です。それまで楽しく音楽をやっていたんですけど、プロになって、多くの人に曲を届けるのをお仕事として選んだからには、嫌でも面倒でも、前にでていかなくてはいけません。それこそ、正統派ロックに悪口を言われても、強い精神で、自分のロックをやっていかなくてはいけないのです、

そんな苦しい現実に直面した時、「おなかのうぶ毛に口づけたのも思い出して」、もう一度頑張ろうと奮起しています。君の身体に触れていた時間を心の支えにして、ステージの上にたって、大きく口を開けて、煙のように煙たい批判の声を吸い込んで、自分の音楽を吐き出すのです。



なんにもないよ見わたして

ボーッとしてたら何故 固まった

先ほど、ブルーハーツの青空はアパルトヘイトについて描かれたものだというお話をしましたが、スピッツの曲には、社会的なメッセージがとくに込められているわけではありません。でも、そのことが、かえって自分たちのロック性を高めていった、ということを言いたいようです。

「いやぁ、自分としてはボーッとしていただけなんだけど、それでなぜか、自分たちの音楽性が固まったんだよ」と、謙虚な姿勢なのか、自分が天才だと言いたいのか、真意はわかりませんが、とにかく、何もないことが自分たちのロックなのだと、言いたいのだと思います。



タンタンタン 石の僕は空を切り取った

タンタンタン 石の僕は空を切り取った

「石の僕」とは「ロックな僕」と言い換えることができます。「空を切り取った」とは、題材として切り取るものが何もありません、ということを言いたいのかなと。反戦とか反体制とか、ロックに相応しい分野からは、切り取る題材がありませんよ、ということを言いたいのだと思います。ロックな僕だけど、いやロックな僕だからこそ、あえて従来どおりのロックは作りません、と宣言しているようです。

マサムネさんが題材とするのは、あくまでも「冷たくって柔らかな二人でカギかけた小さな世界」なのであり、つまり「ニノウデの世界」なのです。





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