スピッツ「みそか」は、文字通り大晦日の歌だった?~スピッツ歌詞解釈~

更新日:1月2日



みなさんこんにちは。八百屋テクテクです。

実は、これを書いている日時は、2021年の12月31日。大晦日の夜です。

テレビでは紅白歌合戦がはじまり、別の番組では格闘技がはじまりました。なお毎年恒例だったダウンガウンの「笑ってはいけない」は今年からなくなりました。ので、観る番組もなくて、しょうがないのでブログ書いています笑


今回は、大みそかだということで「みそか」を分析していきたいと思います。

いやぁ、みそか、って、ずっと何も考えずに今まで聴いてました。「味噌か?」みたいな、なんか美味しそうな味噌味の食べ物のことを歌っている曲なのかなと。

正直、意味なんてどうでもよくなるぐらい、いい曲なんですよね。曲が素晴らしいので、味噌でも醤油でも、どっちでもよかったんです。

でも、どうせ聞くなら、ちゃんと歌詞に込められた意味を調べた方が、より楽しめるんじゃないかなと思いまして。

大晦日といういい機会なので、「みそか」をちゃんと調べてみたいなと。


「みそか」は、大晦日に関係する言葉なんじゃないかなと。

もともと「みそか」は、三十日とも変換できるように、暦の一番最後らへんの日を表す言葉でした。それが転じて、「晦日(かいじつ)」という、暦の最後の日を表す言葉にも、みそか、という読み仮名がつくようになったとされています。

そして、大晦日は、おおみそか、と読みます。暦の上では、一番最後の日という意味ですね。


暦というのは、ただの日付というふうに現代人は考えているかもしれませんが、昔の人は呪術的な意味を見出していました。たとえば、私たちが普段使っているのは西暦のほかに、和暦があります。天皇陛下が即位したりすると年号が変わりますが、これは年号を変えることで古い時代の終わりを示し、古い時代の病魔や厄災を切り離す役割がありました。さらに曜日として割り当てられている、月火水木金土日は、古代バビロニアにおいて聖なる星とされ、日付が変わるたびに順番に地上を支配していたとされています。先の和暦においては、仏滅や大安など、日によって吉凶が存在したりしています。

このように、神族の子孫である天皇陛下の交代や、天体の動きによって、人間の吉凶が左右されていた時代があったのです。暦の影響力というのは、とても大きかったというわけです。


そんな、暦の影響力が強かった時代において、みそかは、どんな役割があったのでしょう?

みそかは、月の暦が変わる一番最後の日、つまり、一つの季節が切り替わる寸前の日です。大晦日ともなれば、ひとつの時代が切り替わるぐらいの、大きな動きをする日です。正月というのは、昨年無事に乗り切れたことを祝う日なのです。昔の人は誕生日ではなく、元日を迎えたことで歳をとっていました。満いくつ、という歳の数え方をするのは、このためです。去年を無事生きのびて、元日を迎えられたことをお祝いするのが、正月なのです。


こう考えると、スピッツの「みそか」というタイトルもまた、「ひとつの時代の終わり」と言い換えてもいいかもしれません。

ひとつの時代を終わらせ、次の時代を作ってやる。そんな場面の曲なのです。



輝け不思議なプライド胸に

凍てつく無情な風の中で

スピッツはアーティストではありますが、日本中の誰もがその名前を知っているように、その存在は巨大です。

でも、スピッツはデビューしてから、「ロビンソン」でブレイクするまで、長い不遇の時代がありました。

そんな、不遇を経験した彼らの、ひとつの時代を切り開いてやろうとする気概を、この詞は描いています。

「不思議なプライド」とは、彼らのロック魂のことでしょう。たぶん他の人からは「スピッツって、そんなにロックなの?」と不思議に見えるはずです。昔、音楽雑誌において、「ミスチルが正統派の優等生だとするなら、スピッツは引きこもりの不登校少年だ」と記者に評されたことがあります。たぶんスピッツ本人たちも、他人にはそう見えているという自覚があるのだと思います。

でも、スピッツには、他人には不思議に見えてしまうかもしれませんが、確かにプライドがしっかりあることを、私たちファンは知っています。

そのプライドを、淀みきった旧時代の凍てつく無情な風の中で、新時代に向けて輝かせてやる、と言っているわけです。



周りに合わせない方が良い感じ

誰かが探しに来る前に

周りに合わせない、とは言っていないのが、スピッツらしいところです。そんな意固地ではないんですよね。

でも、合わせないほうがいい感じ、という部分に、彼らの意志力を感じます。合わせるかどうかは一応迷うけれど、でも時代作りたいから、合わせないようにしたいね。ぐらいの感覚でしょうか。

「誰かが探しに来る前に」の部分は、次の項目に繋がっています。



君をさらっていこうかな 例え許されないことでも

君をさらう、って、どういうことでしょう。DEENの「このまま君だけを奪い去りたい」みたいに、誰かから奪い去るということでしょうか。誘拐するということでしょうか。

私は、このさらう、は、人を連れ去るという意味の「攫う」ではなく、かき集めてすくうという意味の「浚う」という字を当てたいと思います。他にうまい言い方がないのでアレなんですけど、どぶさらい、で使われている、さらうです。

つまり、「君」をスピッツのメンバーに加えようとしているわけです。

でも、同時に、これは許されないことだということも、マサムネさんはよくわかっています。

君というのは、旧時代の人、つまり、スピッツが売れることを信じていない人です。いやそもそも、ブレイクという新時代に踏み出そうとしているスピッツの面々以外の誰もが、旧時代に生きている人なのです。

そんな「君」と、新時代の光を一緒に見てみたい、と思うのは、普通は許されないことでしょう。だって、「君」はスピッツが売れるとは思っていない、普通の人なのですから。そんな普通の人に「俺たちのバンドに入って、一緒に時代を作らないか?」と提案しても、他のバンドメンバーである、田村さんや崎山さん、三輪さんは許さないでしょう。仮に「君」が何かの楽器を演奏できる人だったとしても、「君」とスピッツのメンバーの、売れようとする意志力には温度差があります。「君」と「スピッツ」のどちらにとっても、こういう状態は許されないことです。

でも、マサムネさんは、無理やり「君」を、新時代に連れて行こうとしています。計算もなにもなく、ただ感情にまかせて「君が好きだから、一緒に新時代に行こうぜ!」と言っています。無責任とも思えますが、それだけ大きな熱量を感じます。



越えて越えて越えて行く 命が駆け出す

悩んで悩んではじまるよ 必ずここから

暦の部分で説明しましたとおり、正月は、命のはじまりという側面があります。みそかを越えれば、命が始まります。

暗く冷たいみそかを越えて、光あふれる新時代に突入したと感じれば、命は強く輝くことでしょう。

「悩んで悩んではじまるよ」は、新時代に突入することの怖さや辛さと、それを克服する強さを表しています。新時代のはじまりは、必ず、この底のように暗く冷たい「みそか」からなのです。

そう。この詞を書いているマサムネさんの立ち位置は、まだスピッツが売れていない頃のものなのです。暗い時代にありながらも、そこを「みそか」だと信じて、その次の朝日を目指して、一歩を踏み出している。

これが、この曲のタイトルが「元日」ではなく「みそか」である理由なのです。



約束ひとつを抱きしめて

テレパシー野ざらしあきらめず

この「約束」はたぶん自分自身に対する約束事だと思います。「新時代を作ってやる」ということだと思います。

テレパシーは、この「新時代を作ってやる」と意気込んで世間に訴えたけれども、その思いが伝わらなくて「野ざらし」のように、受け入れられない時間が長かったことを表しています。でも、「あきらめず」



尖った山の向こうから朝日が昇ればすぐに

ここは、富士山とかに現れる、正月の初日の出のことでしょう。暗く冷たい「みそか」も、いつかは明けるということです。



混ざって混ざってでかすぎる世界を塗りつぶせ

浮いて浮いて浮きまくる覚悟はできるか

山の上から日の出を眺めたことのある人なら、この感覚がわかると思います。

日の出前の世界というのは、暗い世界です。でも、山の向こう側から太陽がでた瞬間、かあっ、と太陽光線が世界を覆い、暗い世界を光で塗りつぶしてしまうのです。

でかすぎる世界を、太陽光線で塗りつぶす。新時代の幕開けとは、こういう景色なのかもしれませんね。

新時代を作ろうと覚悟したならば、誰かと違うことをして、浮きまくる。その覚悟はできるかい? という部分で、この詞は終わっています。



新時代を作ってきた、スピッツ。

その気概と熱量は、凄まじいものを感じていましたが、それを私は、今までオリコンチャートのランキングでしか、実感できずにいました。俯瞰的な数字でしか、彼らの意志の強さというのを、実感することができずにいたのです。

「チェリー」や「空も飛べるはず」もスゴイんですけど、彼らの曲は、美しく完成されすぎてていました。私にとってマサムネさんは、出会った時から天才で、詞を書けば必ず人の心を掴むものができる、バケモノのように思っていたのです。人の心が透視できる、人の心のないサトリという妖怪がいますが、マサムネさんは、そういう存在だと思っていたのです。

でも、マサムネさんも、悩みますし、浮くことを恐れます。

ましてや、売れない時代なんて、目の前が暗黒だったことでしょう。凍てつく無情な風の前で、自分の作品たちが蹂躙されていく様を、幾度となく見てきたわけです。心が折れないはずがありません。

それでも、割れない岩を叩き続けてこれたのは、新時代を作れると信じてきたからです。新時代を作れると、自分を信じてくれたメンバーたちがいたからです。

悩んだり、恐れたりしながらも、それでも歩き続けてきた。「みそか」は、私たちに、暗い時代の歩き方を教えてくれるようです。

この暗い時代を表す「みそか」に、こんなに光あふれる情熱を携えていたことを、この曲は教えてくれます。



みそかは、すごいですね!





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