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スピッツ「はぐれ狼」にみる、弱さと嘘の関係。~スピッツ歌詞解釈~



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「はぐれ狼」について解釈していきたいと思います。

この曲は、いったいどんなことを歌った曲なのでしょう? 恋愛でしょうか? そう考える人がいても、いいと思います。いや、そう考えられたなら、けっこう幸せかもしれません。

私がこの曲のテーマとして感じたのは、ブログタイトルにもしましたとおり「弱さと嘘」です。

どうですか? いかにも、つまらない話でしょう?

結構大人めな解釈になると思います。大人といっても、残念ながら、エロいという意味じゃないです。大人同士の、つまらない会話という意味での、大人の話になります。なので、青春真っただ中の青少年にとっては、苦痛でしかないかもしれません。大人同士の会話を横で聞かされるのは、退屈でしかないですからね。

どうぞ、それでもいいという方は、お付き合いくださいませ。


さて。

解釈に入る前に、ひとつ前提を申し上げておきます。

それは、「嘘」をつく人間は、「弱い」という点です。もっといえば、「弱い」からこそ、「嘘」をつき続けなければならない、ということです。

強い人間は、そもそも嘘をつく必要がありません。相手が勝手に降参してくるし、媚びてきます。モテる人、金持ち、権力者、格闘家…他人を圧倒するだけの強みを持っているひとは、なんの不自由もなく楽に生きていけるのです。

では、弱い人はどうすればいいのでしょう? 弱い人は、正直に生きていくことが難しいのです。なので嘘をついて、人を騙して、強いふりをします。嘘、大げさ、まぎらわしい、これらを最大限利用します。嘘は、生きていくために必要な技術で、嘘をつくのが上手な人ほど、うまく世の中を渡っていけるのです。


マサムネさんは、詞の中に動物を出す際、その動物が持つ特性を最大限利用しています。例えば猫は愛らしさ、犬なら素直さ、従順さ、サルならいたずらっぽさ、などです。なにも性格だけに限った話ではありません。魚は進化を表現し、鳥は自由を表現しています。

この詞では狼をだしてきていますが、マサムネさんは、はたして狼に、どんな役割を任せたのでしょう?

古代ヨーロッパでは、狼は、悪魔の化身とされており、魔女狩りが流行った頃には、狼人間として処刑された人間もおりました。また「人狼」というゲームがありますが、これは人間に扮した狼を探し出して追放するゲームです。追放できなければ、人間が食い殺されます。

このように狼は人間に扮することができる動物のようですが、その目的は人間を欺き、食い殺すことです。同じ人間を欺く動物として、キツネやタヌキがいますが、彼らの化かし合いはかわいいものとして表現されることが多いでしょう。一方で狼は、騙されたら、すなわち、死にます。これは怖いですね。

なんでこんなに狼は、人間を食い殺すことに必死なのでしょう? どうしてキツネやタヌキのように、化かすことにユーモアを感じさせないのでしょう?

それは狼は、「弱い」生き物だからだと、私は思うのです。弱いからこそ、狼が生き残るためには、人間を騙して殺す必要があるのです。その殺し方は必死そのもので、ユーモアが挟まる余裕もありません。必死になって殺しに来るし、必死に嘘をついて、騙そうとしてきます。

この狼の必死な様子を、人間に当てはめてみてはどうでしょう? 嘘をついて、自分を大きく見せようと必死になって、でもバレちゃって、それを隠すためにもっと大きな嘘をついて…。そんな、嘘のつき方も、自分のかばい方も、必死な人。そういう心の弱い人間が、今回の詞のテーマになっているような気がするのです。




誰よりも弱く生まれて 残り物で時をつなげた

誇りなどあるはずもなく 暗いうちに街から逃げた

かすかな匂いをたどる 邪念の中の命

「誰よりも弱く生まれた」とは、自己紹介です。弱いので、嘘をつき続ける人生を送ることになった、狼くんです。

狼くんには、残り物しかまわってきません。大半は、強い人間が持って行ってしまうからです。スポーツやコンクールでは、それぞれ優劣が付きます。1番がとにかく褒められますが、2番や3番だって、それなりに褒められるでしょう。では、5番、6番はどうでしょう? 100人いて、100番目になった人は、どうでしょう? 全員が同じように頑張っても、優劣によって褒められ方が変わります。1位が栄誉を独占して食い散らかし、続いて2位、3位が余ったものを食べて…という形になり、後半になればなるほど、栄誉の取り分が減っていくような形になります。100番目の人が食べられる栄誉は、ほとんど残っていないでしょう。でも狼くんは、この残りかすを食べて生きてきました。

そんな街に嫌気がさして、逃げました。

どこに行くのかといえば、「かすかな匂い」のするほうです。これは何の匂いなのかというと、美味しそうな匂いです。

狼くんは、邪念をもって、この美味しそうな匂いを嗅いでいました。そうです。騙して食らおうとしていたのです。生き抜くために。



はぐれ狼 乾いた荒野で 美しい悪魔を待つ

冬になっても 君を信じたい まどろみの果てに見た朝焼け

「君」とは、美しい悪魔を指しているのだと思います。美しい悪魔とは何かというと、「」のことだと思います。美しいという字は、羊から来ています。そしてなにより、狼が狩りをする動物といえば、羊です。

ただ、羊を羊と言わずに、美しい悪魔、と表現しているのは、マサムネさんのやっかいなところです。この羊はただの羊ではなく、悪魔なのです。キリスト教の伝説に、羊の頭をもつ悪魔として有名なバフォメットがおりますが、まさにここに登場する羊は、バフォメットなのです。

乾いた荒野には、餌がありません。草が育たず、それを食べる動物が寄り付かないからです。しかも冬が来るようです。乾いた荒野は動物を寄せ付けない、死の大地になります。

それでも、この狼くんは、たったひとりで、美味しそうな羊に扮したバフォメットを待ち続ける羽目になってしまったのです。「君を信じたい」と願いながら。

気温が低下して、眠気が襲ってきました。まどろみの果てに朝焼けを見たとありますが、これは希望を表しているのか、それとも絶望か……。



騙しあい全て疑い 剥がれた塗装の下にみつけた

土台から覆す言葉 記したメモだけを頼った

偉大な力を背後の 穴から覗いたなら

狼くんは、嘘をついて生きてきました。嘘をついている人の周りには、嘘つきが集まってきます。類は友を呼ぶんです。気が付けば、まわりは嘘つきだらけ。

そうやって周りを嘘で塗り固めていったけれど、塗装がはがれる瞬間はいつかやってきます。狼くんは、人を上手に騙していきてきたつもりでしたが、実はもっと大きくて、偉大だと思っていたものに騙されてしまっていました。自分が身を寄せていた家族、組織、社会に、騙され、裏切られていたのです。自分の土台から覆すようなことが起こったのです。

だからこそ、嘘つきの群れを飛び出し、「はぐれ狼」になったのだと思います。時系列的には、これがもっとも古いものになります。はぐれ狼になって、街から逃げ、乾いた荒野をさまよって、羊が現れるのを待っている、という流れでしょう。



はぐれ狼 擬態は終わり 錆び付いた槍を磨いて

勝算は薄いけど 君を信じたい 銀色の影を飛び越えていく

「擬態は終わり」とあります。もう嘘は通用しない状況になりました。羊が現れたからです。

でも、手にした槍は錆び付いています。普段からの手入れを怠り、心身を鍛えることを怠ったため、錆び付かせてしまっていたのです。嘘をついて賢く生きているつもりだったけれど、最後に頼らなければいけなかったのが、錆び付いて役に立たなくなった槍ひとつ。狼くんには、この槍ひとつ以外なにも残っていないのです。この槍ひとつで、自分の運命に真正面から立ち向かい、切り開かなくてはならないのです

そして、羊を前にしても「勝算は薄い」とあります。そうです。もう目の前にいるのがただの羊ではなく、悪魔バフォメットであることを狼くんは気づいています。

それでもまだ、この期に及んで「君を信じたい」だなんて、甘い妄想をしています。目の前にいるのが本物の羊だと、思い込みたいんです。自分が信じたものであってほしいという願望がでています。もう、騙される人の思考ですね。そういう願望は、目の前の認識を歪ませてしまいます。これもまた、彼の心身の弱さです。

誰よりも弱く生まれた狼くんでしたが、狼くんの最後は、自分より格上の悪魔に、無謀なる戦いを挑んでしまうという、「嘘つきの末路」とでもいうべき結果でした。



「はぐれ狼」を、「弱さと嘘の関係」という視点で解釈してみましたが、いかがでしょうか?

どこか、教訓めいた話になっていると思います。

興味深いのは、どうしてマサムネさんに、こんな詞が書けるのかという点です。マサムネさんは、私たち一般人からみれば、大スターです。多くの収入があるでしょうし、モテモテでしょう。自分で好きなことができる立場です。いわば「誰よりも強い人」です。

そんな強い立場にいる人が、ここまで鮮明に、弱い人の気持ちを汲み取れるとは、どうしてなのでしょう? まるで、弱い人の気持ちが痛いほどわかっている、といわんばかりです。

いや、いくつかマサムネさんは、弱い立場の人の歌を手掛けていますし、そのどれもが、単なる表面に触れただけのものではなく、奥行きがあって広く、繊細で豊かなものばかりでした。マサムネさんは、ちゃんとわかっているんです。弱い立場の人の気持ちが。

私もまた、弱い人です。嘘もたくさん吐きます。だからこそ、「はぐれ狼」の詞を構成している言葉のひとつひとつが、胸に刺さるのです。




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