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スピッツ「醒めない」は、幻想のロック大陸に連れて行ってくれる曲説。~スピッツ歌詞解釈~




こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「醒めない」について解釈していこうと思います。

この曲は、スピッツの15番目のアルバム「醒めない」の最初に収録されている、アルバムの名前と同じタイトルの曲です。

アルバム「醒めない」は、原点回帰のアルバムであるとされています。スピッツが最初の頃に表現しようとしていたロック性を、現在の技術で火を入れて打ち直した、というのがコンセプトになっています。

もともとスピッツが、アルバムの内容について「こんなんですわ」と発表したのは珍しいことだと思います。いや、単に私がよく聞いてないだけで、本当は以前のアルバムから教えてくれていたのかもしれませんが、でも、「醒めない」に関しては、よりはっきりと「原点回帰です」という案内が多かったように思います。

そんな「原点回帰」をスローガンにしたアルバム「醒めない」。

この「醒めない」には、どんな思いが込められているのでしょう? アルバムと同じ名前のこの曲を詳しく見ていくことで、アルバム全体に込められたマサムネさんの想いがわかるような気がするのです。




覚えていてくれたのかい? 嬉しくて上ばっか見ちゃうよ

やけに単純だけど 繊細な生き物

昼の光を避けて ブサイクな俺の歴史上

ギターはアンドロジナス 氷を溶かしてく

この曲は、マサムネさんと、ファンである君が対話していることを表しているのだと思います。さて、ここでのマサムネさんは、いったい何者なのでしょう? マサムネさんは、自分のことを、どんな生き物だと言いたのでしょう?

ひとまず、幻術士だとしてみましょう。ひとの形はしているけれども、自分の想像した幻想世界を見せてくれる、ひとにあらざるモノ、それが幻術士です。ファイナルファンタジーとか、ドラクエとか、物語にでてきそうな、怪しいローブを纏った人物が、現実世界のアナタの目の前に、バーンと現れた、というのが、曲が始まる前のシチュエーションです。

この怪しい人物には、しかし、アナタには見覚えがありました。はるか昔、元気がなかった自分に幻術を見せてくれて、元気にしてくれたことがあった人物でした。彼が見せてくれた幻術は、楽しいものもあれば、恋の喜びに関するものもあれば、あるいは悲しさで涙があふれてくるものもありました。性愛に関するものもありました。エロティックな彼の幻術は、何も知らない少女だった自分に、めくるめく大人の世界を見せてくれたのです。

それから時が流れ、アナタは大人になりました。就職や結婚などを経て、忙しい日常を送っていました。昔一緒に遊んだ友人たちは離れ離れになり、会話もすることもなくなり、昔を懐かしむ暇もなくなったけれども、そんな生活にも慣れきってしまい、なんとなく惰性で生きているような状態。日常のいろんな不満も不安も少しずつ心に溜まっていく一方で、面白いことがない日々。でも大人って、みんなそんなものだろう、とひとりで心を慰めて、納得している。そんな日々。

そこに表れたのが、例の幻術士でした。幻術士もまた、当然ですが、自分と同じだけ歳をとっていました。

アナタは、あっ、と少女の頃に戻ったような声を上げました。

アナタの反応をみた幻術士もまた、嬉しさを隠さずに笑いました。「覚えていてくれたのかい?」と。

興奮したアナタは、幻術士に思いの丈を話します。少女の頃に見せてくれた幻術がとても楽しかったこと、元気をもらったこと、また会いたかったこと、などを。

それを聞いた幻術士は、恥ずかしそうにしています。「ああ、あの幻術は、ブサイクだったね。おれも若くて未熟だったから、変なものを見せちゃったね……」と。

幻術士は、王道ではない、「昼の光」を避けたような、ひねくれた幻術ばかりを好んで少女に見せて入れたことを、今では少し後悔しているようです。でもアナタは、それを少しもダメだとは思っていません。むしろ、この幻術士らしいとさえ思っています。

アナタは再び、幻術士に幻想を見せてくれるよう、ねだりました。「ブサイクだなんて思ってないです。できるなら、あの頃見せてくれた幻術が、もう一度見たいです。もう一度、すべてにワクワクしていたあの頃に戻れるような、そんな幻術が見たいです」と。

幻術士は、笑いました。「わかりました。アナタの望みを、かなえて差し上げましょう」と言って、ギターを手にします。

アンドロジナスとは、言葉としては、「男らしさと女らしさの両方の特徴があるという意味」というふうになっていますが、この曲においては、意味を当てはめるのではなく、哲学とか神様とかと同じく「物質として触れることのできない、概念」というふうに解釈すると、いい感じだと思います。

幻術士が持っているギターは、現実世界には存在しえない、アンドロジナスという名の概念だった、という解釈はどうでしょう?

この概念から繰り出される幻術が、アナタの心に積み重なった「氷」を投影し、アナタの周囲に映し出しました。その氷たちが、現れたと同時に、氷解していく。そんな幻想世界を見せてくれているのです。



まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が

最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる

さらに育てるつもり

アナタの周りに、ロック大陸が現れました。いろんな音楽が現実化した、喧騒の世界が。

その世界の中には、アナタが最初、ガーンと衝撃を受けた音楽を現実化した場面もありました。その場面を見て、心臓がドキドキと音を立てて動いているのがわかりました。あの時の感動が今も自分の心にあることが、リアルに感じられたのです。

ここにきて、アナタは気が付きました。さっきまで、自分の周りを囲んでいた氷の塊が、この胸のドキドキに応じて減っていくのを。目の前に広がる、色とりどりの音楽たちが、自分の心を揺らし、ビートを刻んでおり、熱をもって自分を温めてくれているのを、アナタは肌で感じることができたのです。

「どうだい?この音楽たちは」と幻術士は、言葉を重ねます。「この世界は、まだまだ育つよ。おれが育ててあげるよ」



カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々

でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

「復活しようぜ」ということは、復活を一緒にトゥゲザーしようぜ、という意味です。

幻術士はアナタに言います。「アナタも、少女だった頃の服に着替えてください」と。

アナタはビックリします。「えっ、だって、私はもういい歳だし、あんな昔流行った服なんて、恥ずかしくて着れないわ」

でも幻術士は、にこにこ笑って、許してくれません。「ダメです。あの頃の幻術が見たいといったのは、アナタではありませんか。アナタ自身が幻術の世界と同化して、はじめて幻術が完成するんです。一緒に、あの頃の気持ちを復活させましょう。情熱があれば、恥じらいなんて、燃えてしまうでしょう」



任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい

もっと膜の外へ なんか未知の色探して

さらに解き明かすつもり

これは、幻術士がアナタに対していった、そのままの言葉です。

「任せろ。おれの幻術で、君に切なくて楽しい時をあげたい。もっと現実の外の世界へ、アナタの中にある幻想の世界へいこう。未知の景色を、未知の曲を探しにいこう。この幻想の世界の秘密を、おれが解き明かしてあげるよ」



見知らぬ人が大切な人になり

相性悪い占いも余計に盛り上がれる秘密の実

運命を突き破り もぎ取れ

ここは、幻術士とアナタとの関係のことを表現しています。少女だったアナタの前から、一度は幻術士はいなくなってしまいましたが、アナタが求めさえすれば、幻術士はすぐに目の前に現れるのです。アナタが望みさえすれば、見知らぬ幻術士がアナタの大切な人になるのです。

「おれとアナタは、本当は相性が悪いみたいですねぇ。そう、当時アナタが読んでいたレディースコミック雑誌の特集に載ってました」

「ええっ!!ちょっと!何を見てるんですか!」

「気が付きませんでしたか? この雑誌、アナタがさっき、当時のカリスマの服をイメージしたときに、一緒に流れ着いてましたよ」

「なんで……?」

「なんで、って……、だって、ここは……この幻想世界は、アナタのロック大陸なんですから。いわば、おれのほうが異邦人なんです。おれをこの世界に呼んだのは、アナタなんですよ」

なんて会話を、誰にも知られることのない秘密の会話を、幻術士とアナタは今後も、繰り広げていくことになるのでしょう。相性悪い占いも余計に盛り上がれる関係に、アナタと、アナタの中にいる幻術士は、なっていくのでしょう。




という感じで解釈してみましたが、いかがでしょうか?

幻術士、というのはあくまで私の改変なので、好きに想像してもらって大丈夫です。それこそ、現実のマサムネさんを当てはめてみても、全然大丈夫です。

ただ、耳だけで完結している音楽とは違う景色を、マサムネさんは見せようとしているんじゃないかと思って、こんな解釈をしてみました。手触りで、匂いで、目で、頭で、心で感じられるロック大陸。そんな壮大な幻想の世界を、「醒めない」を通じて感じさせることができたら……というマサムネさんの思いを、私は感じることができました。




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