こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「船乗り」について解釈していこうと思います。
この曲のタイトルは「船乗り」となっておりますが、船に乗っているような表現に乏しいので、実際の船の話ではないなぁ、と思っていました。とはいえ、曲のイントロでドンドンドン、と勇ましく始まる部分とか、何かズンズン進んでいくような感じがするので、本当の船乗りのような心境を表したい、という気持ちも伝わってくるようです。
という二つを鑑みると、これは「セーラー服を着た少女に、セーラー(船乗り)のような逞しい気持ちを宿した曲なんじゃないか」という解釈に至りました。
セーラー服といえば、今では女子の制服を指すことが一般的ですが、昔はその言葉どおり、海兵が着用する服でした。船乗りの、いかつい男性が着用していた、実に男らしい服だったのです。日本において男子の学生服である学ランが陸軍の制服を模したものになったことに関連して、女子の制服は海軍を模したものにしよう、ということで導入されたのが、女子学生用制服としてのセーラー服でした。
このセーラー服導入に至る思いは、幾何だったでしょう。当時は、女子にはまだ人権意識や学問が希薄で、必要ないとさえ言われていました。その女子たちに、世界を開拓していく力をつけていこうとするのに、力強い船乗りの力を借りようとしたのが、セーラー服のはじまりでした。セーラー服には、強い想いが込められていたのです。
たぶんこの詞は、マサムネさんの恋愛模様ではない気がします。マサムネさんの親戚あたりの、今度中学、高校に進学する姪っ子あたりが主人公になって、描かれたものなんじゃないかなと。実際に、セーラー服を着用する年齢になった女子を想定したものなんじゃないかなと。
詞を順番に眺めていきましょう。
もうちょいな俺のままで力まかせに漕ぎ出せば
ネイビーの雲赤い空 渡る鳥も一緒に歌う
「ネイビー」は、ロイヤルネイビーと言われるとおり、イギリス海軍のカラーです。そして、冬用セーラー服の色は、ネイビー色になっています。わざわざここにネイビーという色を指定して導入しているということは、これはセーラー服のことですよ、と強調したい思惑が見え隠れするようです。また、赤い空、というのも、セーラー服の赤いネクタイを連想させます。いや、今はそうでもないかもしれませんが、昔は、セーラー服といえばネイビー柄に、赤いネクタイばっかりだった頃がありました。男子の学ランはほぼ変化していないのに、女子はカラフルかつオシャレになりましたね。おかげで、セーラー服というと、どの形状のものを指すのか曖昧になっちゃいました。ので、今を生きる人はあまりピンと来ないかもしれませんが、「ネイビーの雲赤い空」の表現は、景色を表しているのと同時に、セーラー服を連想する配色となっているのです。
中学校高校に進学したばかりの、「もうちょい」な状態だった少女が、セーラー服に袖を通したことで、船に乗って、力任せに人生という海原に漕ぎ出している、という場面なのだと思います。
始まりのときめき 本当に俺は生まれていた!
水平線の向こうには何かありそうな気がしてる
少女が思春期を迎えたことで、「おお…!」と人生がはじまった瞬間です。思春期は、何もかもが面白くて、何もかもに感動できる時代です。これまでは、動物と同じで、ただ受動的に生かされていただけでしたけれども、これからは自分で考えて、自分で人生を切り開いていくことができるようになりました。これが、この少女が「本当に俺は生まれていた!」と感動する場面なのかなと。
この位置からまだ見えない、水平線の向こうには何があるのか…つまり、どんな未来が待っているのか、ワクワクしちゃいますね。
大事な日忘れないで すぐに終わりがあってもね
並んで怖いほど 胸が高鳴り容赦なく
遠いところまで君を連れてゆく
風に尋いてくれ
ここでの「大事な日」とは、セーラー服に袖をはじめて通した日、つまり入学式のことなんじゃないかなと。すぐに終わるのは、セーラー服を着ていられるのが、この学校に通う3年間のみだからです。
入学式では、この少女と同じく、セーラー服に身を包んだ少女たちが、ずらーっと並んでいます。将来への希望を燃やした船乗りたちがこんなに大勢いるのは、そりゃあ嫌でも胸が高鳴りますよね。
ここでの「君」は、セーラー服のことかなと。数々の想いによって作られ、希望をもたらしてくれるのはセーラー服ですが、実際に未来に向かって船を漕いでいくのは少女自身です。どんな未来が待っているのかわからないけれど、ここから遠い未来にいくことだけは確かです。このセーラー服と一緒に。
「この船旅がどうなるかは、風に尋いてくれ」と少女は勇ましく言います。少女は船乗りなのですから、どんなに海が荒れようと、勇敢に立ち向かっていくのです。
間抜けな恋のメロディー あちらこちらに花が咲く
ふり向いて見たけれど 同じ物はひとつもなく
2番は、より女子中高生らしい事情になってきます。まわりでは、「間抜けな恋のメロディー あちらこちらに花が咲く」という状況だそうです。
でも、どの恋愛模様も特別で、何ひとつ同じものはなかったそうです。私たち大人から眺めたら、似たようなことばかなのかもしれませんが、この連例の少女にとっては、特別で大切なものなのでしょう。
幼いフリをして あんな言葉もいいかもね
並んで怖いほど 胸が高鳴り容赦なく
遠いところまで君を連れてゆく
風に尋いてくれ
これまで幼い幼いとばかり思っていた少女も、セーラー服を着るようになったことで内面も外面も急激に変化していっています。
なにかマサムネさんや、他の大人たちを唸らせるような、するどい一言を言い放ったのでしょう。「恋愛って難しいもんだね……」と、これまで幼い子供だと思っていた少女に言われたら、えっ!?!?とビックリしちゃうでしょう。まあここは、もっと前向きで、かつビックリするような言葉だと思うんですけど、どんなものがあるでしょう? 「同じように生きていても、死ぬために生きている人と、生きるために生きている人がいる。生きることに一生懸命な人が残した功績は、その人が死んだ後も、ずっとひとの世に生き続ける。そういう人に私はなりたい」なんて言うのは、ちょっと行き過ぎでしょうか。私のまわりにそんな子供がいたら、感動を通り越して、逆にちょっと心配になっちゃいます。うーん、あんまりいい塩梅の言葉がでてこないですね…。
まあとにかく、頼もしい言葉を吐いてくれたのだと思います。いいかもね、と思うぐらいには。
このセーラー服の少女の行く先には、希望しかないようです。少女に吹く風のみが、彼女の行先を知っているのです。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
この詞のタイトルを考えるうえで、だいぶ悩んだと思います。ただでさえスピッツファンには、エロい曲を作る人だというふうに認識されているマサムネさんなので、バカ正直に「セーラー服」だなんて付けちゃうと、「すわ、大人のビデオの話か?とうとうやりやがったな!」と鼻息を荒くさせてしまうことでしょう。本当に伝えたい事というのは、正直に書いても伝わらないことがあるという好例ですね。そういうのを回避するため、苦慮したことが伺えます。
そういう意味では、このマジメ一辺倒な八百屋さんの立場から、こういう解釈を出すのは、有効かもしれません。だいたいの人は私がお伝えしたい内容を、そのまま捉えてくれるものだと思います。「ああ、セーラー服の少女による、希望に満ちた未来への船出の話なんだな」という話だと、理解してくれるものだと思います。
本当にヤバイエロい曲がでてきてしまったら、この一般八百屋さんには、もうどうしようもないんですけど、できるだけ真面目な路線で頑張っていきますので、どうぞこれからもお付き合いをよろしくお願いいたします。
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