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スピッツ「海とピンク」は、静岡旅行のことだった説。



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「海とピンク」について解釈していきたいと思います。

この曲は、ちまたではエッチな曲として解釈されているようです。冒頭のピンクのまんまるが、ピンクのまん●、つまり女性器の俗称を指しているのだとか。私もまた「そうなんかな……」と深く考えず右に倣えでこの説を信じていましたが、やはり今までのマサムネさんの歌詞傾向から、そうとは言いきれないんじゃないかな、と思うようになりました。

というのも、マサムネさんは詞の最初から最後まで、ちゃんと意味が通じるような詞を描きます。まるで俳句を作るときみたいに、膨大な言葉を集めてきては削ぎ落し、また集めては削ぎ落しを繰り返して、自分が詞のなかで主張したいテーマをもっとも効果的に表現してくれる配列に、言葉を組み立てていくのです。

私はエロが苦手とはいえ、エロとしてしか解釈できなかったものは、しょうがない、エロ解釈として載せてきました。ちまたでは、スピッツ初期にエロい曲が集中しているような印象をうけるかもしれませんが、頻度こそ少ないものの、円熟した後半でもドエロいやつとかいきなりぶっこんできたりしています。この、エロ曲を作る際にも、上から下までちゃんとエロい表現がなされているのです。エロい詞が、めちゃめちゃ綺麗に精密に計算されて、組み立てられているのです。

なんかエロい言葉を連想させるようなワードを思いつくままぶっこんで、後始末をしないなんて横着は、私が解釈する限りでは、マサムネさんはしないのです。エロい曲を作るなら、ガッチガチにきっちりエロい曲を作る。それがマサムネさんの詞の方針だと、私は思っています。


じゃあ、この詞はいったい何なのか、ということですが、私は、マサムネさんが漢字で遊んでいるという説を推したいと思います。この解釈なら、ちゃんと最初から最後まで意味が通るし、主張したいテーマみたいなものも、詞全体を通じて見えてくるのです。

そして、ピンクのまんまるとは何かというと、ここは八百屋さんらしく、イチゴということにしたいです。

イチゴにも、ちゃんと意味はあります。順番に詞を眺めていきましょう。




ほらピンクのまんまる 空いっぱい広がる

キラキラが隠されてた

「ピンクのまんまる」はイチゴということですが、これが空いっぱいに広がっています。イチゴは本来、地を這う植物なのですが、ハウス栽培や観光農園などでは、腰より高い位置にイチゴがくるよう、培養コンテナの高さを調整しています。そのコンテナから伸びたイチゴが、空中でブラーンと垂れ下がるわけです。これならイチゴが地面に着くこともありませんので、衛生的で、かつ収穫しやすくなります。この状態のイチゴを、少ししゃがんだ状態から眺めれば、「空いっぱい広がる」ように見えるわけです。イチゴが好きな人からすれば、イチゴ天国ですね。

ちなみに、今のイチゴは「あまおう」に代表されるように、濃い赤色が特徴ですが、当時のイチゴは赤色というより濃いピンク色で、今に比べると着色が薄かったんです。先端の部分こそ濃い赤ですが、ヘタの部分はまだ完熟していなくて、白色なのが普通でした。そういうイチゴを全体的に眺めると、ピンク色っていう表現が適していると思います。

つまりこの詞は、マサムネさんが観光農園に訪れて、「わ~、イチゴがこんなにいっぱい!」とワクワクしながらイチゴ狩りを楽しんでいる場面からスタートしているのです。

次の「キラキラが隠されてた」ですが、イチゴは漢字で「苺」と書きます。草かんむりに、母という字です。この母という漢字のテンテンが、キラキラというわけです。

不思議ですね。一見すると、イチゴには母要素がみあたりません。もっとも八百屋さんぐらいの知識を得ると、理由がわかります。先ほどイチゴは地を這うと申しましたが、親株が子株を直接作るのです。普通、植物は種で子孫を増やしますが、イチゴは種以外にも、株で増殖できるのです。「苺」という字は、この特殊な増殖の様子から、名付けられたものだと考えられています。

この、何気ないイチゴ狩りに、母の漢字を発見したマサムネさん。のちに、もっとも美しい歌詞を描くアーティストともてはやされることになるマサムネさんですが、この当時から言葉の成り立ちや使い方について、探求していたというわけです。

「へぇー! イチゴにも、キラキラが隠されているんだなぁ!」と、その不思議さに、アーティストとして感じ入っている様子です。



繰り返し遊んだら すぐそばで笑ってた

毒入りのケーキのカケラ

「繰り返し遊んだら」ですが、これは漢字の成り立ちとかを繰り返し考える遊びをしている部分だと思います。この遊びは、歌詞づくりにおける頭の体操になっているはずです。ちなみに、繰り返すことを「毎」と言いますが、ここにも「母」という文字が使われています。

そうですね。ここまで来たらわかりますね。次の「毒」にも「母」がいます。次のケーキですが、ケーキと言えばイチゴが乗ったショートケーキを大半の人は思い浮かべると思います。この、毒と苺のケーキの、カケラが笑っていたそうですが、これらの漢字を分解してみたとき、笑うことのできる部位といえば、母となります。

そうです。この時、マサムネさんの隣で笑っていたのは、実母です。私は、そう解釈しました。この詞は、恋人のマリチャンでもナナチャンでもなく、カーチャンと一緒にいる曲なのです。



しんしんと花びらも

指先で冷たくふるえてる

「花びら」は、文字通りイチゴの花びらです。ハウス栽培でのイチゴ狩りは、3月とか4月とか、比較的寒い時期に行われます。指先でイチゴの花に触れてみると、軸が細いので震えているように見えます。「あ~イチゴちゃん、まだ寒いのに頑張ってるね~」と、マサムネさんは、イチゴの中に母性のような、人間味を感じているようです。



小さな玉砂利が

足の裏くすぐる海岸で

ちょっと君を見て 海を見て

あくびして

観光ツアーは、どうもマサムネさんの出身の福岡ではなく、三輪テツヤと田村明浩の出身である、静岡県で行われた可能性が高いです。どちらもイチゴの名産地ですが、福岡のイチゴ産地である久留米市や八女市は海岸と接しておらず、また福岡県の海岸は綺麗な砂浜になっています。一方で静岡のイチゴの名産地である静岡市では、玉砂利の海岸が有名です。マサムネさんはこの時、スピッツのメンバーとも一緒にいたのかもしれません。

まぁそれはともかく、もしここが静岡県の海だとするなら、太平洋側の、落ち着いた海ということになります。

ここでも、「母」と、「海」を眺めて、マサムネさんは気が付きます。なんと海にも、母が入っているではありませんか。海は生命の源なので、生命全ての母だと考えられているからです。静岡の海なら、母なる海を感じることができるでしょう。

「あくびして」ですが、ここは「あー! 母じゃーん」と気が付いた時の、「あー!」と大きな口をあけて驚嘆したことを指しているんじゃないかなと思います。

驚嘆の声をあげることを、「嗨」と書きます。どうも、母関連の漢字で遊びたいことが伝わってくるようです。



プラスチックでがっかり 言葉だけ無邪気になる

ほらまた騙されてた

次の観光バスの行先は、お土産屋さんでした。静岡ですと、名産品のイチゴのほかに、ミカンとかウナギとか、いろんなものが思い浮かびます。

福岡出身のマサムネさんのお母様にとっては、遠路はるばる静岡にまで来ることなんてなかったでしょう。目についたお土産を、片っ端から買っていたのだと思います。

しかしながら、この時代のお土産は、容器だけでかいけど上げ底で、中身はほんのちょっと、みたいなものが散見されました。高いお金を出して、印刷だけは豪華にみえる外側のプラスチックの容器を買っているようなものです。

ようは、何も知らない観光客を「晦」くらませることで、利益をむさぼっていたわけです。

マサムネさん一行は、騙されてガッカリと「悔」くいている一方で、簡単にお金を巻き上げることができた観光業者は、マサムネさん一行をいいカモだと「侮」あなどったことでしょう。

マサムネさんは、これらの漢字を発見して笑おうとしましたが、どうもそんな雰囲気ではないようです。特にお母様は、遠路はるばるやってきたのに、悪徳業者に騙されて、テンションだだ下がりです。

仕方なく、「また発見しちゃった」とだけ、言葉だけ無邪気に述べるのでした。



いらないものばっかり 大事なものばっかり

持ち上げてキョロキョロして

静岡でのお土産を両手に抱えて、お母さまは帰路につきます。悪徳業者から買った中身スカスカのお土産も、イチゴ農園でもらった美味しいイチゴも一緒くたにして、つまり「いらないものばっかり 大事なものばっかり」を抱えているのです。

「帰りの新幹線は、どっちかしら?」と、キョロキョロしています。



とんがったゴミの中

かたくなる身体をよせ合って

がんばって嘘つきで

それでいてまじめな告白に

ちょっと君を見て 海を見て

あくびして

ほとんどゴミであろうお土産の山を抱えて、マサムネさんとお母様は、混雑する静岡駅ではぐれないよう、身体をよせ合っています。旅の疲れで、肩とかが凝って固くなっています。

別れ際です。こういう時、お母様だったら、ひとりでなんとかやっている息子に対して、何か励ますような言葉をかけたはずです。

その別れ際の内容が、マサムネさんにしてみたら「がんばって嘘つきで、まじめな告白」だったそうです。

「本当はマサムネには、福岡で就職してほしかったんだけどね。でも音楽やりたいなら、しょうがないよね。いいお友達もいるみたいだし、お母さん安心したわ。お母さん、これからどんなことがあっても、マサムネのこと、ずっと応援してるからね。なんだっけ、惑星S・E・Xのテーマっていうの? 聴いたけど、いいと思うわ。お母さん才能あると思うわ」

だなんて、無理やり息子を褒めだしたとしたら、マサムネさんはどう思うでしょう? めちゃくちゃ動揺して、目が泳いだに違いありません。母を見て、海がある方向を見て、「えーっ」と大きな声を出したに違いありません。

スピッツのインディーズ楽曲でもインパクト絶大な「惑星S・E・Xのテーマ」

お母様の立場からしたら、デビューと聞いたからには、自分の息子がどんな曲を描いているのかについて、関心がないはずがないのです。お母様は、地元の友人たちをつたって、どうにかインディーズの楽曲を手に入れたのだと思います。当然、この曲も入っています。

お母様は、「惑星S・E・Xのテーマ」を、心の底からいいとは思っていないとは思うんですけど、でも自分の息子が自信満々にプロデビューするんだと息巻いて家を飛び出していったものですから、信じてあげたい気持ちはあると思います。お母様からすれば、「惑星S・E・Xのテーマ」を自信満々に手掛けたマサムネさんを、信じてあげたいのです。

これが、「がんばって嘘つきで、まじめな告白」の内容だと思います。これを実の母親からきいたマサムネさんは、生きた心地がしなかったでしょう。汗が噴き出したに、違いありません。この近くにもしスピッツの他のメンバーがいたら、全員苦笑いしていたことでしょう。



という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?

この曲はエロい曲ではなく、その対極の、家族のほのぼのストーリーなのです。と私は主張したいのですが、どうでしょう?

実際にあった話かどうかはわかりませんが、もし本当にあった話だとしたら、面白いですね。



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