
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「歩き出せ、クローバー」について解釈していきたいと思います。
この詞は、マサムネさんが映画「フォレストガンプ」にて閃いた詞だそうです。「フォレストガンプ」のどの部分を抽出したのかというと、たぶん愚直にひたむきに頑張ったところだと思います。
人生とは、幸運なこともあれば、不幸なこともあります。映画の主人公であるガンプは、知能指数が劣ってはいるものの、だからこそ愚直に頑張って課題に立ち向かっていきました。失敗したり、挫折したり、できない、なんて選択肢が彼の中にはなかったのです。成功するまでひたすらやり続ける以外の選択肢がなかったので、何をやっても成功をおさめました。
一方で、彼の将来のパートナーになる女性は、少女の頃からひたすら転落してく人生を辿っています。ひたすら成功していくガンプと、あえて対照的に描くことによって、当時のアメリカのリアルを描こうとしていたみたいです。彼女はまともな判断能力が備わっていたため、自分の前に立ちはだかる壁の高さを知って、登るのを辞めてしまったのです。暗い闇の底で、自分の境遇に絶望し嘆き続ける人生を送ることになるのです。
成功するガンプと、挫折する彼女。違いは、運命の扉を叩き続けることができたか、どうかです。
この考え方が、スピッツ「歩き出せ、クローバー」で言いたかったことなんじゃないかなと、私は思うのです。
順番に詞を眺めてみましょう。
未知のページ 塗りかえられるストーリー 風に向かい
歩き出せ 若くて青いクローバー 裸足のままで
マサムネさんは、ある時、不思議な夢を見ます。夢の中で神様が現れて、こういいます。
「今から私とトランプゲームをしましょう。ルールは簡単です。手札から一枚カードを出しあって、強い方が勝ちです。ハートが一番強くて、次がダイヤ、スペードと続き、クローバーが一番弱い。同じマークだったら、数字の大きいほうが強い。カードは無限にあるので、無限に勝負ができます。もし神様である私に一度でも勝てたら、現実でのアナタを成功させてあげましょう。未知の未来を、私が塗り替えてあげますよ。また、私に勝てなくても、特にペナルティはありません。やりますか?」
マサムネさんは、ふたつ返事で了承します。勝てなくてもペナルティはなく、もし勝てたら成功だなんて、いいことしかないではありませんか。そんなの誰でもやるに決まっています。
とは思ったものの、いざ手札を眺めて落胆します。手札には、クローバーしかなかったからです。しかも、1とか2とか、数字が若いカードばかりです。これでは、何度やっても勝負は明らかです。
とはいえ、この夢を見る前にマサムネさんは、映画「フォレストガンプ」を観ていました。そこで、何事も愚直にやって、諦めないことを学んでいたのです。
神様とのカードゲームがはじまりました。マサムネさんは、手札を一枚一枚、切っていきます。神様のカードは、ハートの13とか、強いカードばかり。大負けです。神様はマサムネさんのことを、愚かな人間だと嗤いますが、マサムネさんは一見無意味なゲームを、「裸足のままで」つまり、なんの戦術も戦略もなく、ひたすら続けていきます。「若くて青いクローバー」のカードに、「歩き出せ」と念じて、一枚一枚、切っていきます。
過ぎた恋のイメージに近いマーク 指で描き
流れ出す自由で激しいメロディー 一人きりで
「過ぎた恋のイメージに近いマーク」とは、トランプに描かれていたハートマークのことを指しているのだと思います。このハートに負かされ続けているので、失恋のイメージが浮かび上がってきているのだと思います。
だけど、マサムネさんはこの勝負に勝つために、ハートマークのカードをどうにかして手に入れることができないかと考えています。それが、ハートのジェスチャーになったのだと思います。
「なーに? 何が欲しいの?」と神様は、マサムネさんが困っているのを見て、ニヤニヤとマサムネさんをからかってきます。
「アナタの、ハートが欲しいと思っています」
「そう。ふふふ。でもあげませんよ」
「そうですか。……ひとつ、ハートをいただけそうな作戦を思いつきました。やってみてもいいですか?」
「へぇ。何を見せてくれるのでしょうか。私は神様ですよ? 通用すると思うなら、やってみなさい」
マサムネさんは立ち上がって、歌い出しました。「流れ出す自由で激しいメロディー 一人きりで」つまり、自分にできることを最大限、神様にぶつけてみることにしたのです。能力や才能を出し惜しみせず、自分にできることを全力でやってみることにしたのです。
戦闘機よりも あからさまな
君の声 優しいエナジー
「戦闘機よりも あからさまな」というのは、めっちゃ明らかだということを言いたいのだと思います。戦闘機は、戦闘をするための機体ですから、敵意があるのは明らかです。でもこの戦闘機の敵意よりも、さらに明確に、目の前の神様から伝わってくるものがあった、ということです。
それは、「君の声 優しいエナジー」とのことです。
マサムネさんが歌ったことで、神様の声が優しくなりました。優しいエナジーが、マサムネさんの心に伝わってきたのです。
歩き出せクローバー 止まらないクローバー
熱い投げキッス 受け止める空
マサムネさんは、神様とカードゲームを続けています。マサムネさんはなおも愚直に、クローバーのカードを切り続けています。
それと同時に、「熱い投げキッス」つまり、空にいる神様に向かってキスをする勢いで、「自由で激しいメロディー」をひとりで歌い続けています。
そしてその歌を、神様は受け止めてくれているのです。
泣きながら笑い出し「嬉しい!」と何度も叫び
寝ころがって眺めた 君のカード 胸にあてる
入道雲から 伝えている
そのままで優しいエナジー
空から、ハートのカードがひらひらと落ちてきました。それをマサムネさんは掴みます。マサムネさんは、泣きながら笑い出し「嬉しい!」と何度も叫びました。また、寝ころがって眺めた君のカードを胸にあてました。めちゃくちゃ嬉しいのが、伝わってくるようです。そりゃそうです。このカードがあれば、神様に勝てるかもしれないのです。神様に勝てれば、「未知のページ 塗りかえられる」かもしれないのです。
神様の姿が、入道雲に隠れてしまいました。でもマサムネさんには、入道雲の形から、神様の優しいエナジーが伝わってくるのがわかります。
見えなくなった神様相手に、マサムネさんは「熱い投げキッス」のような歌を届けながら、クローバーのカードを切り続けています。今自分にできることを精一杯やることで、運命を切り開こうとしているのです。
だんだん解ってきたのさ
見えない場所で作られた波に
削り取られていく命が
この一連の夢を通じて、マサムネさんにはわかってきたことがあります。それは、世の中の仕組みについてです。
いちばん最初のフォレストガンプの彼女の話に戻りますが、彼女は自分の運命に抗うことをしなかったために、転落の人生を辿ることになりました。そこが自分のいるべき場所だと思い込んでいたようですが、実はそこは岸壁でした。岸壁にいた彼女の命は、ガンガン波に削り取られていったのです。彼女のように、自分の運命を諦めてしまって動かずにいたら、かえって危ない目にあうのです。
混沌の色に憧れ完全に違う形で
消えかけた獣の道を歩いて行く
ここは、さきほどまでの夢の内容を踏まえて、マサムネさんが歩いて行こうとしている道を表現したものだと思います。「混沌の色」は、神様からもらったカードの色よりも強い色、つまりジョーカーのことだと思います。ジョーカーがあれば、神様がどんなカードを出してきても、絶対勝てるではありませんか。
このジョーカーを手に入れるために、どうすればいいのか。「完全に違う形で消えかけた獣の道を歩いて行く」とのことです。結局、神様や他人に叶えてもらった夢というのは、地に足のつかない、実力が伴っていない成功なので、どこかで破綻するのです。だから自分でしっかり自分の道を、愚直に誠実に、フォレストガンプのように進むことが大事だということです。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
フォレストガンプは古い作品ですし、「歩き出せ、クローバー」もまた、長いスピッツの歴史の中でも、比較的初期の頃の作品となります。マサムネさんがフォレストガンプを観たのも、この詞を手掛けたのも、とても若いころだったのです。
もし、この私の解釈が正解だったとしたら、そんな若いマサムネさんが、ここまでの内容をフォレストガンプから吸収していることに驚きますし、それを詞にアウトプットできているのにも驚きです。やはり天才ということには疑いないと思います。
この八百屋さんなんて、ずーっとこの詞の意味がわからずじまいでした。「フォレストガンプ?俺も見たけど、なんかこの詞と関係あるの? わかんねえや」的な。この歳になって、やっと朧気ながら見えてきた、という具合です。解釈するのがやっとだし、作詞はもっと無理です。
天才の作ったものを味わうには、ある程度の時間が必要なのだと思います。凡人の私は、歩き出せ、クローバー的な感じで、ちびちび歩いていこうと思っています。マサムネさんが若いころに仕上げた詞を、老衰で死ぬまでにわかればそれでいいや、という気持ちで、向き合っていければと思います。
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