
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「日曜日」について解釈していきたいと思います。
この詞は、ブログタイトルにもあります通り、週刊少年サンデーについての曲なんじゃないかなーと思っています。
詞の内容が一見すると夢の内容みたいな、支離滅裂なんですけど、解釈する側としては、「これはマサムネさんが日曜日に見た、支離滅裂な夢の内容だ」とはやりたくないのです。それを言い出したら、どの曲もそうだと言うことになってしまいます。
マサムネさんが作る詞には、何かテーマがある。テーマに沿って、作っている。そう思いたいのです。
もし、この曲にテーマがあるとしたら、「ワタクシ草野マサムネは、あらゆる漫画を眺めて、自分の曲の参考にしています」みたいなことを言いたいんじゃないかなと。
こう考えた時、日曜日から名前をとった雑誌があることを思い出しました。そうです。週刊少年サンデーです。
週刊少年サンデーに関しては、あまり説明することがないとは思いますが、少年ジャンプや少年マガジンと並ぶ、日本でもっとも売上の高い漫画雑誌のひとつです。スピッツの「日曜日」が収録されたアルバム「名前をつけてやる」が発売された頃は、漫画文化の中でも隆盛期といわれた時代でした。もっとも充実していた頃と言えるでしょう。この頃の作家としては、高橋留美子さんの「うる星やつら」とか、藤田和日郎さんの「うしおととら」、ゆうきまさみさんの「機動警察パトレイバー」、そして青山剛昌さんの「YAIBA」など、今現在でも名前が挙がるような作品、作者が活躍していた時代でした。少年の誰もが漫画雑誌を買い、あるいは書店やコンビニで立ち読みをしていました。当時は週刊誌の立ち読みについてはあまりやかましくなかったので、読まれ過ぎて表紙はビリビリ、中身はボロボロ、という週刊誌が売っている、だなんてことはザラにありました。
マサムネさんもまた、週刊少年サンデーを読んでいた少年だったでしょう。今のマサムネさんの尋常でない発想力は、「うる星やつら」や、「うしおととら」で培われたものなのかもしれません。
この詞は、週刊少年サンデーをワクワクしながら読んでいるマサムネさんという解釈は、どうでしょう?
詞を順番に眺めていきましょう。
晴れた空だ日曜日 戦車は二人をのせて
川をのぼり峠を経て 幻の森へ行く
「晴れた空だ日曜日」は、めっちゃワクワクしている様子が伺えます。でもその次に「戦車」とあります。このままの意味で捉えると物騒なんですけど、この戦車が、「機動警察パトレイバー」のことだったらどうでしょう。この話はガンダムみたいな機械に乗り込んで戦う警察の話なんですけど、基本的にはこの機械は一人乗りです。でもこの時、主人公の機械には、主人公と、読者であるマサムネさんの二人が乗り込んでいたんですね。マサムネさんは主人公目線で、敵と戦うわけです。
ところで漫画雑誌というのは、最初から最後まで丁寧に読む人もいるでしょうけれども、たいていの人はドラゴンボールとかワンピースとか、自分が読みたいと思う漫画を中心に読んでいます。なので1ページ目から順番に読むのではなく、好きな漫画はどこかなーとペラペラめくって、そこから読みます。そこだけ読みます。立ち読みで済ませる人なんかは、まさにそういう読み方をしていました。熱心なファンは後で単行本を買うので、週刊誌はどちらかといえば、漫画紹介雑誌みたいな立ち位置だったのでしょう。今は立ち読みはほぼ禁止になりましたので、違うのでしょうけれども……。
とにかく、マサムネさんもまた、「戦車」が出てくる漫画を最初に読んでいたみたいです。それがマサムネさんのお気に入りの漫画だったのです。その漫画を最初に読むことで、漫画を読みたい欲を増幅させて、次の漫画へと行くのです。「川」がパトレイバーだとしたら、もっとも面白い「峠」にあたるのは、当時は大人気漫画だった「うる星やつら」かもしれません。それらを読み終わったら、今度は「幻の森」に行きます。これは新人作家とか、マサムネさんがよく知らない漫画のことだと思います。どんな漫画なんだろう、面白いかなぁ、ワクワク、みたいなノリで、手をつけようとしています。
きのうの夢で 手に入れた魔法で
蜂になろうよ
このまま淡い記憶の花を探しながら
「きのうの夢で 手に入れた魔法」とは、漫画から仕入れた新しい発想のことだと思います。普通の人だったら、漫画を読んで「あー面白かった」で終わりでしょうけれども、マサムネさんはアーティストなのです。アーティストであるからには、日常のどんなことにもアンテナを張っていなければいけません。その中でも、漫画は、表現の宝庫なのです。自分が知りえなかったこととか、気づかなかったこととかが、沢山載っています。この要素を吸収して、アーティストとして大きくなるのです。貪欲に吸収して自分のものにできるかどうかが、アーティストとしての技量に直結するといってもいいでしょう。
マサムネさんは「手に入れた魔法」といっています。「機動警察パトレイバー」や「うる星やつら」の要素を、自分のものにできた実感があるようです。
次の「蜂になろうよ」は、強い一刺しで、世の中に一石を投じよう、ということだと思います。マサムネさんは、自分の作る曲がムーブメントを起こすことを夢見て、頑張っています。
でもそれは、「機動警察パトレイバー」や「うる星やつら」を、まるまる盗用することではありません。それではただのパクリになってしまいます。「淡い記憶の花を探しながら」つまり、ちゃんと自分の頭の中にある引き出しから、物語を紡ぎださなければいけません。
破れかけた日曜日 パンチの光を浴びて
レモンの香る湖に飛び込んだ君の背中
鬼の群れも木陰でうたたね
蜂になろうよ
このまま淡い記憶の花を探しながら
「破れかけた日曜日」とありますが、マサムネさんはサンデーの発売日に買い遅れたようです。書店には、立ち読みされすぎて、破れかけたサンデーしか残っていなかったようです。
でも、そんなボロボロのサンデーを定価で購入して、ページをめくっています。「パンチの光を浴びて」は、格闘漫画か、不良漫画のことを指しているのだと思います。西森博之さんの「今日から俺は!!」は、のちにテレビドラマが製作されるほど人気の漫画でしたが、時系列でいうと、マサムネさんがこの詞を手掛けた頃は、まだ連載開始直後のようです。よっぽどピンときたか、もっと他に該当する漫画があるのかもしれません。
「レモンの香る湖に飛び込んだ君の背中」もまた、何かの漫画の一コマだと思うのですが、水に飛び込むことで性別が変化する、高橋留美子さんの「らんま1/2」のことかもしれません。
「鬼の群れ」は、「うしおととら」を彷彿とさせます。この漫画は、のちの日本の妖怪アニメに大きな影響を与えました。
色白女神のなぐさめの歌よりも
ホラ吹きカラスの話に魅かれたから
「ホラ吹きカラスの話」とは、サンデー漫画のことだと思います。彼らの作る創作は、みんなの関心を集めますし、マサムネさんのアーティストとしての感性すらも、惹きつけたようです。
それの比較対象になってしまっているのが、「色白女神のなぐさめの歌」なのですが、これはまあ、アイドルの曲とか、そっち系だと思います。アイドルの曲もまた、みんなの関心を集めました。「セーラー服を脱がさないで」なんて、大ヒットしました。でもマサムネさんは、色白女神たちが歌っている「セーラー服を脱がさないで」よりも、「機動警察パトレイバー」のほうが気になっているようです。テレビで色白女神たちが「エッチをしてみたい」と誘っているのを尻目に、寝転んでサンデーに夢中になっているマサムネさんという場面を、想像してしまいます。
晴れた空だ日曜日 戦車は唾液に溶けて
骨の足で駆けおりて 幻の森へ行く
きのうの夢で 手に入れた魔法で
蜂になろうよ
このまま淡い記憶の花を探しながら
「戦車は唾液に溶けて」とのことですが、これは自分の中で「機動警察パトレイバー」を咀嚼して、味わいつくした、ということだと思います。「おいしかった!」と満足している様子なのだと思います。
次の「骨の足で駆けおりて」ですが、「もっと、もっとちょうだい!」と、マサムネさんが亡者のようになって、新しいアイディアが詰まっているであろう「幻の森」へと駆け出していってる様子を表しているのだと思います。どちらも、アーティストとして、漫画のアイディアに魅かれている様子が伺えます。
この時マサムネさんが手に入れたアイディアによって、現在における私たちスピッツのファンは、機知に富んだ素晴らしいスピッツの曲を聴くことができているのだと思います。
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