
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「恋のうた」について解釈してみたいと思います。
この曲は、スピッツのターニングポイントになった曲だそうです。というのも、それ以前のスピッツは、ブルーハーツに似たロック路線だったそうです。ブルーハーツの二番煎じじゃダメだ、ということで、路線を新しくする上で編み出したのが、この「恋のうた」だったのです。この曲を起点に、それ以降の新しいスピッツの曲が作られていった、というわけなのですね。
いわば、すべてのスピッツの曲の原点になっている。そんな曲だと思うのです。
ところで、みなさんファイナルファンタジーや、ドラゴンクエストはやったことあるでしょうか。
あのシリーズの中でたびたび登場するシステムに、転職、というものがあります。勇者として剣で戦っていた人が、魔法使いになることができるのです。でもこの場合、勇者レベルは50だったとしても、魔法使いになったら、またレベル1からはじめなくてはいけません。勇者時代がどんなに強かったとしても、魔法使いレベル1では、弱い魔法しか使えないのです。
マサムネさんをはじめ、スピッツのメンバーたちは、気が付きました。このまま勇者としてレベルをあげていっても、先がない。なので魔法使いに転職して、またレベル1からはじめよう、と。
そんなこんなで完成したのが、この「恋のうた」なのだと思います。新しい職業に転職したマサムネさんたち(全員レベル1)が作り上げた、「恋のうたレベル1」なのです。
詞を書いたことのない素人が詞を書こうとした際、よくやる失敗例が、他の誰かの詞で印象に残った言葉とか、感銘をうけた言葉とかを、消化せず、そのまま自分の詞に代入してしまうことです。
もしアナタがビートルズにどれだけ感銘をうけたとしても、自分のオリジナル楽曲に「Let It Be」なんてタイトルを付けてはいけないということです。詞の一部にさえ使ってはいけません。必ず失敗するからです。なぜか。「Let It Be」を、自分の中で消化できていないからです。自分の言葉になっていないからです。どーしても「Let It Be」みたいな曲を作りたいなら、自分の中で消化して、自分の言葉で「Let It Be」を表現するべきなのです。
同じように、気取った言葉とか、慣れない言葉とか、自分で勝手に作った造語とかも、使うべきではありません。理由も同じです。自分の言葉ではない言葉を、その場しのぎで使うべきではないのです。それを行えば、必ず失敗します。
素人が目指すべき最初の目的地は、「雨が降ったら、雨が降ったと書く」ことです。どんな状況で、何が起こって、結果どうなったか、それを丁寧に描くのです。それが基礎基本なのです。格好つけるのは、レベルがあがってから、というわけです。
この「恋のうたレベル1」は、マサムネさんの恋を描いたものだと思います。それも、作詞の基礎である「雨が降ったら、雨が降ったと書く」ことを忠実に守ったものだと思います。私たちスピッツファンは、後年のマサムネさんの詞の柔軟さ、捉えどころのなさを知っているので、ついこの詞もまた、そういう色眼鏡で見てしまいがちですが、そうではないということです。「ミルク色」が精液のことを表現している、つまりエッチな曲なのだ、隠れエッチ曲なのだ、とつい思ってしまいがちですが、この詞が出来た背景を考えると、まだこの時点ではそのレベルに達していない、とみるべきだと思います。
というわけで、私はこの詞は、特に裏の設定も、解釈が難しい部分もない、きわめてそのままの曲だと思っています。
恋のうたというテーマに対して、めちゃくちゃ正直に向き合って、誰のものでもない自分の言葉で、作り上げた曲なのだと思います。
おさえきれぬ 僕の気持ち
おかしな夢ばかり見てさ
だけどここに 浮かんでいる
君の頭の上にいる
悲しいこと 飛び散るとき
僕のところに来て欲しい
きのうよりも あしたよりも
今の君が恋しいから
君と出会えたことを僕
ずっと大事にしたいから
僕がこの世に生まれて来たワケに
したいから
ミルク色の 細い道を
ふり返ることなく歩いてる
きのうよりも あしたよりも
今の君が恋しいから
どうですか。そういう目線でこの詞を眺めてみると、またグッとくるものがあると思います。
これまで恋愛について、いろんなことを詞の中で述べてきたマサムネさんでしたが、本当の本当の原点が「君と出会えたことを僕ずっと大事にしたいから 僕がこの世に生まれて来たワケにしたいから」という部分にあるのだとしたら、その意味がうずっと重いものに感じますよね。「きのうよりも あしたよりも 今の君が恋しいから」もまた、意味が重くなります。ただのフレーズではなく、心の底からそう感じているという、本心なのです。
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