
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「待ちあわせ」について解釈してみようと思います。
この曲は、みなさん、「待ちあわせにすっぽかされて、待ちぼうけしている男性」みたいな解釈をしていませんか。すっぽかされて、ウエーン、と泣いている、みたいな。
私がこの曲を聴いたのは中学生の時だったので、「待ちあわせの約束をすっぽかされたら、悲しいね」と思っていたのですが、大人になって改めて詞を眺めてみると、違和感があります。そうですね。大人なんだから、待ちあわせの場所に来なかったからといって、泣くことはないのです。そして、できない約束は、はじめからしないのです。
と考えてみると、この詞の中で行われた「約束」とは、「今日ランチに行こうぜ」的な、そういう類の約束じゃない、ということがわかります。もっと重大な、人生に関わるような約束だったんじゃないか、と思います。
順番に詞を眺めていきましょう。
だけど君は来ない待ちあわせの星へ 約束した場所へ
「星」には、惑星を表す言葉として使われる以外にも、いろんな意味があります。この詞での意味として最も適切なのは、「ロックスター」などで使われている星でしょう。つまりこの詞は、マサムネさんの個人的な詞なんだと思います。
マサムネさんは、スピッツとしてデビューしました。そして楽曲を手掛けたり、ステージで歌ったりしています。そういったアーティスト活動を生業として、生きていくことを決めたのです。その活動を支援してくれたのが、当時の彼女でした。
「いつか俺は、ロックスターになりたい。応援してくれるかい?」
「うん。いいよ。私も、アナタの才能を信じてるから。ずっと応援してるから」
と、その時は彼女もマサムネさんの才能を信じていたし、支えていくことを誓っていたのだと思います。
でもマサムネさんのデビュー当時は、売れないバンドマンでした。ヒバリのこころでデビューしてから、ロビンソンで大ブレイクするまで、わりと長い期間、売上不振に悩んでいました。
少し前に、男性の将来度ランキングというのがツイッターで出回っていました。どんな職業に就いている男性が将来性があるか、という表で、婚活女性は大いに参考にしているそうです。一番上のランクは大手企業の重役、高級官僚、都市圏に不動産を持つ地主で、その下に財閥系企業社員、実業家などが続きます。残念ながら私のような八百屋さんは表のずっとずっと下で、結婚非推奨な職業だったんですけど、そんな八百屋さんより下に位置していたのが、売れないバンドマンでした。
この時代にはツイッターは存在しませんでしたが、この表のような認識自体はずっと昔から存在しています。むしろ今よりも激しいくらいに、職業差別が公然と行われていた時代だったのです。当然ながら、売れないバンドマンに対する世間の風当たりは、とても厳しいものでありました。普通の感覚をもっている女性だったら、まず近づかない存在だったと言えるでしょう。
この時マサムネさんと付き合っていた彼女は、ごくごく普通の感覚の持ち主だったのでしょう。マサムネさんの才能を信じているとはいえ、将来のこととなると話は別です。彼女もまた将来が怖いのです。ご両親にも心配をかけたくないのです。
「ごめん、やっぱりアナタと一緒にいけない」
と、マサムネさんに彼女は申告しました。
マサムネさんが、ロックスターの道を駆け上っていく途中のことでした。これ以上、彼女はともに歩んでくれなくなりました。マサムネさんが到達することになるであろう、約束されたロビンソンでの大ブレーク時には、彼女は自分の隣にいないことが確定してしまったのです。
最後のキス そっと ふれた頬
彼女は、待ちあわせをすっぽかしたわけではないのです。マサムネさんと将来約束した場所に、行かないことを選択したのです。
彼女も別れがつらいのです。彼女は、泣いたりもしたでしょう。
二人で、そっと触れるだけの最後のキスをします。お別れのキスです。
シャボン玉の中でぬくもり確かめた 震え抑えながら
飾りのない恋 ドロドロの
ここは、お風呂場でエッチしているシーンだと思います。この行為は、別れを告げられた後のことだと思います。お別れのための性行為ですね。
お互い好き同士で、だけど別れなくちゃいけなくなった時、どういう気持ちで性行為するのでしょう。「震え抑えながら」「ぬくもり確かめた」そうです。ちょっとこの八百屋さんには、重すぎて、うまく表現できません。
「飾りのない恋 ドロドロの」というのは、これは本当にそうだと思います。別れたくないのに、彼女のため、別れることを選んだマサムネさん。「失恋」という言葉では言い表せないぐらい、失意のどん底にいたことでしょう。
待ちわびた僕の涙 落ちてにじむ様を見ていた
そして君は来ない待ちあわせの星へ 約束した場所へ
帰らぬ日々 澄んだ水の中に
彼女がマサムネさんの前から去って、見えなくなった時、マサムネさんはやっと「待ちわびた僕の涙」を流しました。彼女がいなくなるまで、泣くのをずっと我慢していたのです。自分が泣いたら、彼女の決心が揺らいでしまいます。彼女には彼女の人生があります。彼女の歩みを、止めるべきではないとマサムネさんは思ったのです。
目指すべき方向を違えたので、マサムネさんが到達すべき場所の先に、彼女が待っていることはないのです。
待ちわびた僕の涙 落ちてにじむ様を見ていた
そして君は来ない 百万年前に 約束した場所へ
帰らぬ日々 澄んだ水の中に
「百万年前に」のあたりに、マサムネさんと彼女の、積み重ねた時間の長さを感じることができます。相当長い時間、マサムネさんと彼女は一緒にいたのでしょう。お互いがお互いを信頼して、応援もしてくれていたのでしょう。そんな彼女との、別れなのです。
そうやって積み重ねた、思い出の時間や信頼は、すべて透明な水の中へと消えていきました。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
この解釈が本当だとしたら、マサムネさんの、だいぶ個人的な物語が垣間見えるような、そんな詞だと思います。人生が、詰まっていると思います。
マサムネさんは宣言通り、ロビンソンでの大ブレークで、自分で約束した星にたどり着いたといえるでしょう。その後も自分との約束を果たし続けています。これはすごいことですね。やはりこの時に持っていたマサムネさんの才能は、本物だったといえるでしょう。
一方で、その才能に気が付きながらも、マサムネさんと一緒の道を歩むことができなかった彼女もまた、その選択に健闘を称えられるべきかと思います。当時としては、最良と思える判断を下したのですから。彼女がいたから、「待ちあわせ」が生まれ、次に連なる楽曲が産み出され、マサムネさんがロックスターにたどり着く助けになっていたのかもしれません。
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