
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「君だけを」について解釈していきたいと思います。
この曲は、亡くなった大事な人を想う曲だと思います。夜空の星になってしまった君を眺めている曲だと思います。
また、「描いてる」とありますが、詞の主人公がマサムネさんだとしたら、君のことを想った曲を作っているということになるかと思います。基本的には「描く」とは絵を描くことを指しますが、夜に灯りもともさない真っ暗な中で絵を描くのは大変ですからね。これは、頭の中でやっている作業、頭のなかでできる作業なのだと思います。
さらに考察するなら、マサムネさんの作る曲の中には、亡くなった君を想う曲がけっこうあります。もしかしたら本当にマサムネさんは大事な人を亡くしていて、「これからもずっと君のことを描き続けるよ」とこの詞の中で決意したのかもしれません。そうであるならば、この後に出てくるいろんな死別の曲は、「君だけを」にて語った想いこそが原点になっているのかもしれません。スピッツの曲において「死」は重要なテーマの一つですが、この詞を探れば、原点が見えてくるかもしれません。
順番に詞を眺めていきましょう。
街は夜に包まれ 行きかう人魂の中
大人になった哀しみを見失いそうで怖い
砕かれていく僕らは
「人魂」とは、亡くなった人のからだから離れた魂のことを指します。こんなものが見えたなら普通はホラーなんですけど、この詞の中に限っては、マサムネさんは驚きません。むしろ、魂が見えるなら見えていて欲しい、ぐらいの心境でいます。もしこの人魂の中に会いたい人がいるのなら、結構な話ではありませんか。
でも、マサムネさんはもう分別のある大人なのです。行きかう人魂の幻想は眺めてはいるものの、現実ではありえないことは知っています。この人魂は、自分の願望が見せているもので、本当は何もない空間なのだということは、知っています。
「大人になった哀しみ」とは、詞の内容に沿えば、人魂が現実にはありえないことだと認識できることだと思います。人魂がありえないということは、もう亡くなってしまった人にあえる手段が存在しないという、残酷な現実を突きつけられることなのです。
でも、そんな哀しみも薄れて、見失いつつあります。マサムネさんはそれだけ、大人になってしまったのです。
「砕かれていく僕らは」は、僕と君との関係が、時間経過によってだんだん砕かれていくという意味だと思います。マサムネさんが大人になって物事の分別がついてきたこともそうですし、マサムネさんは歳をとるけど彼女は歳をとらないこともそうです。彼女が年上だったなら、生きているマサムネさんはどこかで彼女の歳を追い越してしまうことになります。たとえ同年代だったとしても、時間経過により大人と少女の関係になってしまうのです。
さらに、他人からどう見られるか問題もあります。他人からしたら、亡くなった人のことを想い続けているのは、イビツに思えることでしょう。もし大人の男性が「幼い時に一緒に遊んだあの子のこと、忘れられないんだ」なんて言っていたら、「アンタ、いつまで引きずってるの」って気味悪がられるでしょう。他の人から変な人だと見られたくない、という思いから、たいていの人は大切な人を忘れるか、忘れたフリをするのです。
こういう状況もまた、砕かれていく、という表現がぴったりきます。
星の名前も知らず 灯りともすこともなく
白い音にうずもれ カビ臭い毛布を抱き
思いをはせる 夜空に
「星の名前も知らず 灯りともすこともなく」は、夜空を見上げている様子だと思います。とはいえ、天体観測ではないので、目に映っている星の名前もわかりません。また灯りとかをともして優雅に過ごそうという気分でもないようです。
夜空を眺めているのは、彼女との心の通信を試みる、儀式のようなものなのです。
次の「白い音」ですが、これは白の意味を探ると、なんとなく見えてきそうです。白は普段は色として使われていますが、他にもいろんな意味があります。けがれのない潔白、はっきりしている明白、なにもない空白。これらが今、音になって聞こえてきている、ということだと思います。あたりが夜の静けさに包まれて、澄んだ星空が広がっている。シーンとした静寂ばかりがそこにはあったでしょう。その、汚れのない澄んだ静寂に、感覚を委ねているのだと思います。
次に「カビ臭い毛布」ですが、これにも物語性がありそうです。たぶんこの儀式は、彼女の命日とかのタイミングで、定期的に行っているのだと思います。この詞の主人公は、アウトドア系でもキャンパーでもないと思うので、夜空の星を眺めるということを普段はしておらず、そのため外で毛布を抱くという機会が、この彼女に対する儀式以外ではないのです。ちょっと使って、汚れたりしなかったら次のシーズンまで収納しっぱなしなので、カビ臭くなっているというわけです。
君だけを 必ず 君だけを描いてる ずっと
サビです。サビは、この詞の中で、もっとも言いたかったことを言う部分です。この詞は上から下まで、すべて「君だけを描いている」ということを言いたいがために、言葉を尽くしているのです。
描く、とは、マサムネさんの場合は、曲の題材にする、という意味になります。マサムネさんにとって死別したこの彼女は、それだけバカでかい存在だったのだと思います。
一人いつもの道を歩く 目を閉じて一人
不器用な手で組み立てる 汚れたままのかけらで
いつか出会える時まで
君だけを 必ず 君だけを描いてる ずっと
「不器用な手で組み立てる 汚れたままのかけらで」もまた、上記の解釈どおりなら、マサムネさんの作詞のことだと思います。これだけ綺麗な詞が作れるマサムネさんですが「不器用」と自分では思っているようです。また詞の言葉も、綺麗ではない、「汚れたままのかけら」をつなぎ合わせているみたいです。もっとも、ここは汚れたままのかけらを使用したほうが適しています。綺麗な言葉で言い表せない感情なので、私たちの心に深く響くのだと思います。
「いつか出会える時まで」は、マサムネさんが死ぬ時です。死ねば、あの世で彼女と合流できるのです。合流してしまえば、目の前に彼女がいるので、それ以上彼女の幻影を描く必要がなくなる、というわけです。彼女を想い続けている表現の中でも、ここはめちゃくちゃせつない部分ですね。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
冒頭でも申しましたが、スピッツの曲には亡くなった彼女を想う曲がいくつか見受けられます。たぶん「君だけを」と同じ人物を想定したものだと思います。
マサムネさんの曲に出てくる女性というのは、うっすらとしか特徴とか出来事とかが表現されていないので、ひとつひとつの曲から得られる情報はごくごく少数なのですが、曲たちをすべてつなぎ合わすことができれば、彼女の人物像がそれなりに浮かび上がってくるのではないのでしょうか。
気になる方がいましたら、この八百屋さんと一緒に、200曲を超えるスピッツの曲をすべて解釈していきましょう。
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