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スピッツ「今」は、復活したマサムネさんの話だった説。



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、スピッツ「今」について解釈していきたいと思います。

この曲は、マサムネさんが「今だけに生きてる、そんな僕の歌」と語っていたことがあるそうです。この時代のマサムネさんは、曲のことについて、ちょこちょこヒントを出してくれたりしています。それもエッセイ本など、紙媒体で記録が残っているのが嬉しいところです。今でもラジオで曲のことを語っていたりもするんですけど、なかなか隅々まで追えなくて…なので見逃しているヒントがあるかもしれません。

なので、わかっている範囲で、あれこれ考えることになります。もっとも、どこまで情報を仕入れても、はっきりとした回答は得られないため、結局のところ個人的な解釈になってしまうんですけどね。それがもどかしいところでもあり、面白いところでもあります。

話題がそれましたが、この詞は、どうもマサムネさんの個人的な心情を現わした詞のようです。


この頃のスピッツといえば、ロビンソンの大ブレーク直後で、テレビにもCMにもひっぱりだこな状況でした。それに加えて、「スピッツは清純派」とかいうイメージ。バリバリにロックだし、バリバリに性愛をテーマにした曲も作っていたけれど、ロビンソンをはじめ、高校生による青春ドラマ「白線流し」のタイトルに使われた「空も飛べるはず」、吉川ひなのが演じた清純な高校生によるポッキーのCMに使われた「渚」など、スピッツ=清純派みたいな、そんなイメージをもって語られることが多くなっていました。当然、求められるのも、そのイメージに従った楽曲になっていったことでしょう。ロックをやりたいのに、「いや、アナタたちに求められているのは、清純な曲です。ポッキーのCMみたいな曲をお願いしますよ」みたいな、そういうオーダーだって山ほどあったでしょうし、実際、この後もそのオーダーに粛々と従って、山ほどこなしてきたことでしょう。それっぽい曲の存在は、いくらでも心当たりがありますよね。

この時期のスピッツは、そんな世間のイメージと、自分たちが本当にやりたいこととの折り合いが付けられず、一時は解散や引退を考えていたほどだったそうです。前作のアルバム「フェイクファー」の製作では、その悩みが頂点に達していて、しばらくは何も手掛けられない状態だったのです。実際、私はフェイクファーを手に入れたのが中学生でしたが、この詞が収録されているアルバム「ハヤブサ」を手に入れたのは、高校を卒業する頃になってからです。スピッツの永い空白期間を、リアルタイムで体感していたのです。

そんな悩みの時代を経た後の、アルバム「ハヤブサ」の最初の曲。いったい、どんな曲になっているのでしょう?

詞を順番に眺めていきましょう。




ありがとう なぜか夏の花

渚の気まぐれな風を受け

噛み痕 どこに残したい?

「夏の花」っていうのは、悩んでいたマサムネさんに原点を思い出させた出来事、あるいは人を象徴しているのではないのでしょうか。

例えば、福山雅治さんの楽曲「HEAVEN」には、「情熱の花」が詞に使われていますが、「情熱」が花言葉の花といえば、夏を代表する花であるヒマワリです。そして福山雅治さんのHEAVENは、めちゃめちゃダークでエロティックな曲になっています。福山雅治さんはこの時代、「MELODY」「IT'S ONLY LOVE」「HELLO」と、さわやか男性だと思われていました。トレンディ俳優としても活躍しており、誠実で、真面目で、悪いことしなさそうな男性というのが、世間的なイメージだったと思います。そのイメージをぶっ潰して、世間に衝撃を与えたのが、「HEAVEN」だったわけです。

まあ、「HEAVEN」の発表より、スピッツ「ハヤブサ」のほうが発表が早いので、福山雅治さんがマサムネさんの心境に影響を与えた、なんてことはないとは思うのですけれども、例えば福山雅治さんのように、世間ではさわやか男性だと思われていた人が、急にエロティック路線の曲を発表して、世間のドギモを抜いていたとしたら、マサムネさんは勇気づけられたに違いありません。フェイクファー以降のマサムネさんの、解散まで思いつめられた心境を打破してくれるような、そんな福山雅治さんのような存在、あるいは出来事が、「夏の花」だったのだと思うのです。

なので、マサムネさんは「夏の花」に感謝をしています。このアルバムを作る勇気をくれて「ありがとう」と。

次の「渚の気まぐれな風」ですが、私はこれはスピッツの楽曲「渚」のことだと思うのです。上記で述べました通り、「渚」は、スピッツのさわやかイメージを世間に広める役目を担った曲のひとつです。その気まぐれな世間の批評という風に、マサムネさんやスピッツはさんざん翻弄されました。

でも、「夏の花」によって、再び「自分で自由に、思うままに、曲を作っていきたい」という方向性が固まったことで、アルバム「ハヤブサ」は出来上がりました。「噛み痕 どこに残したい?」は、「どういう方向性の曲がいい? 今までは、ここと決められた場所に噛み痕を残そうと一生懸命だったけれど、これから自由にやっていこうと思う。上でも下でも、好きな場所に噛み痕を残せるよ」ということを、言いたいんじゃないかなと。

あと同時に、「エロい路線に感じるような曲も、作っちゃうよ~」っていう意思表示を付け加えたいというのも、「噛み痕 どこに残したい?」という言葉のチョイスに現れているように思います。



君と歩く浅瀬

笑って 軽くなでるように

待ちこがれた「今」

実際の「渚」つまり波打ち際にいる場面と、自分の心の内面をリンクさせているような表現です。

現実のマサムネさんは、「君」つまり、だれか心を許せる人と一緒に、浅瀬を歩いているのだと思います。「フェイクファーの重たい気持ちから解放されて、やっと本来やりたかったことが、できそうなんだ」と、晴れ晴れした気持ちでいるマサムネさんに対して、「そっか。アナタが元気になってくれるのを、待ちこがれていたんだよ。よかったね」と笑ってくれる彼女。そういう光景が浮かんでくるようです。

その一方で、苦しみながら生み出した楽曲「渚」だったけれども、ここでようやくニュートラルな気持ちで向き合うことができた、ということなのかもしれません。「君」は、スピッツファンのことで、そのファンに対してマサムネさんが「笑って」「軽くなでるように」歌い上げることができるようになったのだと。自分たちのやりたい方向性の曲とは違う「渚」も「チェリー」も「ロビンソン」も真摯に向き合えるし、ロックな「メモリーズ」も「8823」もやれる。そういう心境になりました、ということが言いたいんじゃないかなと。「ファンのみなさん、大変お待たせしました。新しい今のスピッツを見てください」ということを、言いたいんじゃないかなと。



ああ 君と歩く浅瀬

笑って 軽くなでるように

いつかは 傷も夢も忘れて

だけど息をしてる それを感じてるよ今

「今」というのは、過去から未来へ行く途中の状態であると言えます。マサムネさんの過去は、さんざん申してきたとおり「フェイクファー」時代にて、身動きがとれなくなってしまっていました。その時代を経て、今、「傷」が癒されて、やっとニュートラルな気持ちでアルバム制作に取り掛かることができるようになったのです。「傷」も「夢」も忘れていない、いわば曲作りにおいては、もっともコンディションがいい状態だと言えます。これが未来にいけばいくほど、どうなっていくのかな、という不安が、マサムネさんにはあります。「傷」も「夢」も忘れてしまうのかもしれません。仕事をただこなすだけの、「夢」を忘れた面白くない大人になっているかもしれません。「傷」を忘れて、キャバクラで「昔の俺はロビンソンとかさ、めっちゃ売れたんだぜ。すごかったんだぜ」という話ばかりをする、しょーもない大人になっているかもしれません。そういう不安が「いつかは 傷も夢も忘れて」に現れています。

そんな過去や未来があるかもしれないけれども、「今」だけは違います。行き場を失っていた「過去」とも、傷も夢も忘れた「未来」とも違います。最高の状態に仕上がっているのが「今」なのです

君の隣で、しっかり呼吸をしているマサムネさん。なんでも表現できそうな、あふれるような感性が、マサムネさんの胸の中に息づいています。それが「今」なのです。




という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?

さきほども述べました通り、私にとってのアルバム「ハヤブサ」は、高校の3年間をひたすら待ち続けた末に発売された、待望のアルバムでした。現在でこそ、新アルバムのスパンは3年で定着していますが、直近のアルバム「ハチミツ」「インディゴ地平線」「フェイクファー」のスパンがとても短かったこともあって、「フェイクファー」以降がめちゃくちゃ長く感じたのを覚えています。途中でミニアルバム「99ep」や、いわゆるB面集である「花鳥風月」があったりもしましたが、これは新アルバムではありません。またこの期間には、一番ファンの心をざわつかせたであろうベストアルバム「リサイクル」が発売されています。スピッツ本人たちが「ベストアルバムが発売された時は、解散する時って決めています」と発言した後での、ベストアルバム発売でした。のちにレコード会社が勝手にやったことだと判明しましたが、その一連の流れをリアルタイムで目撃していた私は、子供ながらに「どうなってるんだ」と思っていました。

当時のスピッツもまた、私たちファン以上に「どうなってるんだ」と思っていたに違いありません。スピッツの周辺は、本人たちの意向にかかわらず、無秩序な風が吹き荒れていて、身体も心も翻弄されていたのです。そんな状態では、自分たちがやりたい音楽なんて、できそうにないですね。

という状態を、どうにかこうにか乗り越えて、「今」に至っているのです。新アルバム制作に取り掛かることができたのです。

こう考えると、「今」の意味が、とても重いものだと思います。





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