
こんにちは。八百屋テクテクです。
今回は、スピッツ「トゲトゲの木」について解釈していきたいと思います。
この詞は、人生の不思議さについて表現している曲なのかなと思います。ブログタイトルには「塞翁が馬」と書きましたけれども、この話自体は、いいことの後には悪いことがあり、そのまた後にはいいことがやってくる、という話です。人生とはこの連続なのです。
詞のタイトルである「トゲトゲの木」は、たぶん、この曲が作られた時代のスピッツがいる場所をたとえたものだと思います。トゲトゲの木は、刺さると痛いですよね。そういう危なっかしい場所に、自分たちはいる、ということを表現したものじゃないかなと。
さらに八百屋さん的に考察すると、このトゲトゲの木は、レモンの木じゃないかなと思うのです。レモンは、白い花が特徴的です。そして、レモンの受粉をする際にはハナムグリを採用する場合があります。これらと、詞との共通点を探ると、レモンの木ぽいなと。
まあ別に、レモンの木かどうかは、ここではあんま関係ないと思います。ようは、レモンの木を寝床と決めたハナムグリですが、他の昆虫からみたら、どう思うでしょう? というのが、この詞で言いたいことなのだと思います。
詞を順番に眺めていきましょう。
トゲトゲの木の上で
ほらプーリラピーリラ朝寝してる
ちょっとだけ目を開けて
つじつまあわせて
ハナムグリ僕はまだ
白い花びらにくるまってる
歩きだした心
くねくねでいいな
トゲトゲの木の上で朝寝しているハナムグリですが、ただただ呑気に朝寝しているわけではありません。ちゃんと、「ちょっとだけ目を開けて つじつまあわせて」と、周囲の様子をうかがいながら、自分のやるべきことに備えて時間を計算しています。
なんでこんなことをしているのかというと、いつトゲトゲの木の上を追い出されるか、不安定な状況だからです。
この詞における、ハナムグリがマサムネさんのことだとすると、もっと状況がクッキリ思い浮かぶかもしれません。マサムネさんのスピッツはこの時、デビューこそしていないものの、そこそこファンの数が増えていた時でした。「きっとデビューできるよ。才能あるよ」と、言われたりしていたのでしょう。とはいえ現状は、音楽で稼ぐというところまでは到達していない、有象無象のバンドマンの中のひとりにすぎなかったのです。しっかりした夢があるし、その夢に向かって着実に歩き出してはいるものの、まだまだ到達していない、という、不安定な状況だったのです。
マサムネさんは、この頃の自分の立ち位置について、「トゲトゲの木の上で朝寝している、ハナムグリだ」と表現したのだと思います。
探していたものはもう ここにあるよ
僕のころ嫌いだって言った 君にも
一方で、その他の大勢の人はというと、働きアリとして働くことを望んでいました。いい大学に行き、いい会社に就職し、いい車に乗り、いい娘と結婚し、いい家を建てる。そんな真面目な目標に向かって、真面目に頑張っていたのです。
「君」もまた、働きアリとして真面目に生きようと思っていたのでしょう。そんな君からすると、ハナムグリの生き方は、癪にさわるのです。こっちが汗水たらして一生懸命生きているのに、寝て遊んで、フラフラして。君から見るとマサムネさんは、そういうふうに見えていたのです。
マサムネさんはマサムネさんで、「絶対成功する」っていう確信が、自分の中にあったのだと思います。「探していたものはもう ここにあるよ」と感じています。ここから数年後にロビンソンで大ブレークするのですが、その下地は、もうこの時点で取得していたのです。
でも、君には、それがわかりません。マサムネさんの言っていることは、その他大勢の有象無象たちが言っていることと、内容が同じだからです。「夢が、希望が」と理想論を口にしますが、やっていることは、ハナムグリが昼寝しているのと同じです。彼らと何が違うのか、最後まで区別がつきませんでした。
君は、マサムネさんの、そういう態度が「嫌い」でした。君は真面目過ぎるがゆえに、マサムネさんと決別することになったのです。
すぐに分けてあげたいな
とどめのプレゼント
箱あけてみなよ
恐くなんかないよ
元気でね
いつまでも
「とどめのプレゼント」は、マサムネさんの作った曲のことだと思います。夢とか、希望とか、そういうのを詞に込めた感じの。
彼女は、現実を見ています。彼女がみている現実とは、マサムネさんみたいに夢をフラフラ追いかけている人が落ちぶれていく一方で、自分みたいに、勉強して努力して普通のまともな人生を送ろうとした人が幸せになる現実です。つまり、こんなに頑張っている自分が幸せになる一方で、マサムネさんが不幸になって後悔していなければ、自分の考えた理屈に合わないことになります。
それなのに、マサムネさんが幸せそうに「夢、希望」みたいな曲を作って、成功している。これは彼女にとっては怖いことです。マサムネさんが成功するということは、自分の人生の選択が間違っているということに、なってしまうではありませんか。
そんな彼女に対して、「恐くなんかないよ」とマサムネさんは慰めています。マサムネさんの成功を認めたことで、自分の人生が失敗だったということには、ならないのです。彼女はマサムネさんに近すぎたから、そう感じてしまっただけで、私たちスピッツの曲を聴いているだけのファンは、マサムネさんの成功によって、自分の真面目に頑張っている人生を否定された気持ちにはなりませんよね。
マサムネさんは、彼女に対して、「元気でね いつまでも」と見送っています。いつか、マサムネさんの成功を、彼女が喜んでくれる日がくるのを期待して。
トゲトゲの木トゲトゲの木
トゲトゲトゲトゲトゲの木
入道雲のタメ息がとどく前の
お日様苦笑いで
ちょうどいいね
洗濯物も乾きそうだね
私はこの詞を「塞翁が馬」の話だと解釈しましたけれども、この部分にもっともその主張が現れていると思います。
「トゲトゲの木」は、有象無象のなかの一人だったマサムネさんの、危うい立場を表しています。ここまでトゲトゲを連呼したのは、マサムネさんに何度もトゲトゲが刺さって、痛い思いをしたことが伺えます。夢とか希望を追いかけて、気楽にプーリラピーリラ朝寝をしている「ふり」をしていますが、実際は傷つき倒れそうになって、それでも諦めず進んできているのです。
でも、そんな態度をおくびにも出しません。マサムネさんにも意地があります。自分に別れを告げた彼女と同じ立場に立って、「俺だって頑張っているんだよ!」だなんて張り合おうものなら、泥仕合です。自分の才能に自信が持てなくなったら、その時点で試合終了なのです。マサムネさんが目指している場所というのは、そういう場所なのです。なので意地でも、お気楽なフリをしなくてはいけないのです。
そうやって頑張っているけれど、最後はやっぱり神頼み。いくらマサムネさんに才能が溢れているといっても、それを大勢の人に見つけてもらえるかは、神様次第です。マサムネさんはトゲトゲの木の上で、天候を読もうとしていています。この場合の天候は、気運とか、天運とか、時流とか、そういうものだと思います。
マサムネさん曰く、「入道雲のタメ息がとどく前の お日様苦笑いで ちょうどいいね 洗濯物も乾きそうだね」だそうです。今までは、雨がざあざあ降りだったんですけど、この日は、マサムネさんにとって都合のいい日だったようです。やっと運が巡ってきた、という感じの出来事があったと、マサムネさんが実感した瞬間だったことでしょう。
だけど僕がまばたきを
したその瞬間に
もう目の前から
君は消えていた
元気でね
いつまでも
「やっと、俺の音楽が認められたんだ! 俺は音楽で成功したんだ!」と喜んで、彼女が待つ部屋へと帰ったのに、そこには彼女の姿はありませんでした。マサムネさんに愛想をつかせて、出ていってしまったのです。マサムネさんは、成功を掴んだの当時に、彼女を失ってしまったのです。
という感じで解釈してみましたが、いかがでしたでしょうか?
マサムネさんの胸の中に去来した虚しさは、どれだけのものだったでしょう。この詞から漂う虚しさは、なんとなく感じていましたけれども、改めてクッキリ解釈すると、胸が張り裂けそうになります。
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