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福井はなぜ発展しないのか~本当は怖い福井県~

更新日:2023年10月30日



こんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、「福井はなぜ発展しないのか」について独断と偏見で語っていこうと思います。

といっても、昨今どんな施策をしようが、大きく発展していくことは難しいでしょう。なぜなら、日本全体で人口が減っているからです。街とは、ひとが住む場所です。街を作るひとがいなければ、街が発展することはありません。

福井で金山が発見されたとか、地面を掘ったら石油が出てきたとか、そういうことがあれば話は別でしょうけれども。

福井県は今後人口がゆっくりと減り続けます。これは、どうしても避けられないことです。

えっ、何とかしたい、ですって?

なるほどなるほど。福井を愛する人にとっては、福井の街並みがなくなっていくことは、寂しいことでしょう。愛する故郷が衰退していく様を眺めるのは辛いですよね。何も哀愁の問題だけではありません。電車やバスなどの公共交通機関の運行数も徐々に減っていくでしょうし、学校や病院なども統廃合していくことでしょう。住むのが難しくなる一方で、住民の目が届きにくくなる土地や建物は、老朽化が進んだり、野生動物の住処になったり、不法投棄の温床になったりします。こうなってしまえば、基本的にはもう取り返しがつきません。人口が減少していき、相対的に綺麗な土地や建物がいくらでも余ってくる状況の中で、誰が好き好んで、こんな荒地にオシャレなカフェを開いてくれるでしょうか? ビルを建ててくれるでしょうか?

こうなる前に、できるだけ手を打っておきたい…。そのためにも、もっと福井の良さを発信して、福井の良さを理解してもらって、他県からの移住者をどんどん受け入れたい。福井の良さに共感してくれる人たちと一緒に、福井を盛り上げていきたい。福井はいいところだから、きっと理解してくれる人も多いはず。米も美味しいし魚も美味しいし、いいモノがたくさんある。ただ発信が苦手なだけだ。ちゃんと理解してくれれば、福井には多くの移住者がきてくれるはずだ。……なるほどなるほど。

福井に住む多くの人が、こう考えているのではないのでしょうか。

「ちゃんと福井の良さが広まれば、福井に移住してくれる人が多いはずだ。ただ伝わってないだけだ」と。


でも、ちゃんと伝わっているとしたら、どうでしょう?

福井の、米も魚も美味しいのはわかっている。福井の自然が豊かなのは知っている。でも福井は魅力的ではないから、移住しないし、いったん出て行った人も戻ってこない、と。

米や魚の美味しさや、自然の豊かさ、住みやすさを差し引きしても、いやな部分があるから、移住しない。……県外在住者にそう思われていたら、どうでしょう?

怖いでしょう? 怖いですよね?




少し前に、「池田暮らしの七か条炎上事件」というのがありました。

どういう事件かと申しますと、福井県の池田町という自治体が、池田町に移住を考える人に対して「池田暮らしの七か条」という提言を発表しました。先住者と移住者との間でトラブルにならないように、という趣旨のもと制作されたものでしたが、これを有名インフルエンサーが「ヤバイ田舎のルール」として拡散したことで、世間に露呈し大炎上することになったのです。

主に、炎上した内容を挙げますと、


・参加、出役を求められられる地域行事の多さとともに、都市にはなかった面倒さの存在を自覚し協力してください。(中略)このことを「面倒だ」「うっとうしい」と思う方は、池田暮らしは難しいです


・今までの自己価値観を押し付けないこと。また都会暮らしを地域に押し付けないよう心がけてください。(中略)これまでの都会暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心がけてください


・プライバシーがないと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください


という部分です。

この部分に、田舎の悪い部分が顕れている、と多くの人々が非難しました。この文言の中に、移住者に対して、気に入らなければ村八分にしたり、または都合よくこき使ってやろうという意思が透けて見えたからです。

「誰がこんな場所いくかよ、さっさと滅べクソ田舎!」と、池田町の7か条を紹介するヤフー記事のコメント欄や、池田町観光協会のツイッターのリプ欄に罵詈雑言が殺到しました。

かわいそうだったのは、池田町で地域振興のために頑張っている若い人です。7か条に懐疑的で「ちょっと言いすぎじゃない?」という立場だったのですが、彼らはSNSやブログなどインターネットを主な活動の場にしていたために、炎上の矢面に立たされることになりました。池田町で頑張っている若い人の中には、他県からわざわざお越しの移住者の方までいたのですけれども、そんな彼らに対して「さっさと滅べクソ田舎!」の罵詈雑言が連日浴びせられたわけです。

それだけ炎上した後も、池田町は頑なに7か条を撤回することはありませんでした。

「私たちは、移住者を歓迎しています」

とまずは弁明し、「ただ田舎の作法をご理解いただけないのは、お互いに不幸ですから、はっきり申し上げた次第です」ということで、理解を得ようとしました。

実際、「最初に親切にいってくれるのはありがたい」と好意的にとらえてくれる方もいました。好意的なのか、はたまた皮肉で言われたのかはさておき、池田町の姿勢は一定の理解を得ることに成功しました。

というのが、いわゆる「池田暮らしの七か条炎上事件」の概要なわけです。




私がこの話を聞いたとき、「池田町の住民には、危機感がないのか……」と落胆しました。

どういうことかというと、池田町は福井県の市区町村の中で最も人口減少率が高い町で、ここ5年で人口の1割がいなくなっている町なのです。人口の流出に歯止めがかからず、このまま時代が進めば、先に挙げたような、建物の老朽化、野生動物の住処、不法投棄の温床、といった問題に確実に直面することになるのです。

そんな状況の中、露呈し炎上した、池田町の方針。

頭を下げてでも移住者に来てもらわなければならない状況であるのに、その移住者に対して「俺たちに従え、お前たちの意見は聞かない」という態度は、どういうことでしょう?


ホリエモンこと堀江貴文氏もまた、池田町を批判していましたが、その批判のひとつとして「ユニバーサルサービスの費用対効果がよくない」ことを挙げていました。ユニバーサルサービスとは、電気、水道、道路、警察や消防など、住民が暮らすうえで平等に受けることができる行政サービスのことです。どんなに田舎でも道路がちゃんとありますし、電気も使うことができます。事件があれば警察が来てくれます。「事件? ん~アナタのところ遠いから、明日いくわ」なんて、ならないですよね。110番したら、すぐに駆けつけてくれます。ただし、人口が多い都会と、人口が少ないのに土地が広い田舎では、これらのコストが全く違います。都会も田舎も当たり前に使えるサービスも、提供する側としては、田舎のほうがはるかに負担が大きいのです。この問題に対して、もっとも効率的な解決策は、田舎に住む住民を都市に移住させることです。これなら、コストがかからなくて済みます。

つまり、池田町をなくすことが、日本国民のためになる、と言えてしまうのです。

池田町をなくす大義名分を、池田町民は、ホリエモンに与えてしまったわけです。ホリエモンそして、彼を支持する多くの人々に、「ムカつく田舎をなくしてしまえば、コストも減らせるし、せいせいするわ」と思わせてしまったのです。

そりゃあ、ホリエモンが望んだところで、池田町を解散させることはできないでしょう。ムカつくからという理由で、住民を退去させることはできません。

しかしながら、少なくない数の国民の怒りを買って、滅んだほうがいいと思わせてしまったことは、池田町の今後の運営にとっては、不利に働くでしょう。


止まらない人口減少に加えて、国民の怒り。

ここから、どう巻き返したらいいのでしょう? 池田町の自然の豊かさを地道に発信し続ければ、良さが広まって、移住者が増えてくれるでしょうか?

池田暮らしの七か条を完璧に理解して、池田町の方針に従い、町民の品定めにも理解を示し、トラブルも起こさず、池田町のために黙々と無償で奉仕してくれる移住者が、こぞって押し寄せてくるようになるでしょうか?

まあ、「夢物語だな」と私は思います。

池田町を維持していくためには、少なくとも人口が減少する分だけ移住者を求めなければいけません。ここ最近は1年で200人減ったので、少なくとも200人以上を受け入れなければ、維持できないことになります。1年で200人、5年で1000人、黙々と無償で奉仕してくれる移住者が、現実問題として必要なのです。

「世界の人々が手を取り合って仲良くすれば、世界平和は今日にでも成るでしょう」「国民全員が結託して貯蓄した財産を全部使えば、景気が回復するでしょう」「子供を天才にする学校教育にすれば、日本は世界に誇れる技術大国になれるでしょう」「池田町の良さが広まれば、池田暮らしの七か条に理解を示してくれる、多くの優しい人の目に留まり、移住を考えてくれるでしょう」……これらは全部夢物語です。現実を見据えた政策とは言えません

移住者を本気で求めようとするなら、勇気と希望を抱いて移住を考えてくれる人たちに対して、住民のほうから歩み寄って、サポートをするような提言にしなければいけません。また本気で増やす気がなかったのなら、そもそも「池田暮らしの七か条」なんて、世間様にケンカを売るような内容のものを作るべきではありませんでした。住民の意識を変えて、移住者とともに発展していくか、それとも、移住者の受け入れをやらずに、ひっそりと町の歴史に幕を閉じるのか、どちらかを選ばなければいけませんでした。中途半端なことをした結果、どっちの結末よりも悪い、大失敗をしてしまいました。


では、池田町は、移住を考えてくれる人に対して、どういう提言をすればよかったのでしょう?

これはよく言われていることですが、「何かを変えたいと思うなら、変えられるのは自分しかいない」という、人間の法則があります。

宿題を怠ける子供にいくら命令しても、なかなかやってくれません。子供と一緒に勉強をしたり、一緒に図書館にいったりと、自分の動きを変化させながら試すことで、状況を変化させることができるのです。

前述した、特に顰蹙を集めた条文について、住民側から動いて、移住者に寄り添うような内容にすると、例えばこうなります。


・地域行事の多さはありますが、参加、協力はそれぞれ任意です。昼食はありますが、お酒のある会合はありません。興味を持たれた方は、まずはお気軽にご参加ください。住民は移住者さんに付き添いでの、丁寧なご案内、ご指導をお願いいたします。移住者さんの、町での体験が、「面倒だ」「うっとうしい」に勝るよう、住民の方は努めてください。

清掃活動については主に土地の所有者の責任で行い、用水の清掃は生産組合で管理できる範囲内を行います。管理しきれない田畑については新規就農者を受け入れています。興味のある方は窓口までご連絡ください。農業体験の希望などもお気軽にどうぞ。


・住民は移住者さんに対して、今までの自己価値観を押し付けないように心がけてください。今までの田舎暮らしの当たり前は、これからの当たり前でなくなることを自覚しましょう。また、生活環境が変わった移住者さんが、都会暮らしのことを言うのは無理のないことだと理解しましょう。住民は、移住者さんと、暮らしやすい良い町の在り方をともに考え、作りあげていくようにしてください。


・プライバシーがないと感じさせるようなお節介をしないようにしましょう。品定めと思われるような声掛けはしないようにしましょう。このようなお節介や品定めなどを見かけた住民は、優しく指摘してあげてください。移住者さんと住民との間に入れる良識ある住民を、町はもっとも大事にしています。


どうでしょうか。

本気で住民を増やしたいと思うなら、このくらいの意思表示がないと難しいと思います。

いや、こうすれば住民が増える、というものではなく、こうでもしないと増えない、というラインです。

池田町に危機感があったのなら、こういう提言になったんじゃないかな、と思うんです。でも危機感がなかったので、ああいう提言になったのです。




さて。

池田町の失敗を、福井県民は、笑っている場合ではありません

池田町の一連の流れは、まさしく、福井全体にも当てはまる現象です。福井は人口が減り続けている県です。であるにも関わらず、移住を積極的に受け入れている姿勢がありません。いや、金銭的な生活支援が充実していないとか、そういう制度的なことではなく、住民の態度のことです。

「池田暮らしの七か条」について、「池田町は正しい」と考える福井県民は多かったはずです。「まあ言葉はちょっとキツイけど、でも言ってることは正しいよね」と。「田舎のルールを受け入れらない人には、来てもらわなくて結構」と。

この姿勢が続く限りは、福井の人口が減るのを止められないでしょう。移住を考えるひとにとって、福井の住民の態度は、魅力的なものではないからです。

人口は、日本全体で減っています。ということは、すでにパイの奪い合いがはじまっているわけです。移住政策に積極的な地域や、移住を歓迎する住民が多く住む地域が、移住先として選ばれるようになっていくでしょう。一方で、移住しようとする人に冷淡な地域は、人口の減少に対して、指をくわえてみているだけになります。池田町の未来は、そのまま福井全体の未来になりえるのです。

もし、福井の明るい未来を描きたかったら、早急に態度を改めなければいけません。意識を改革しなくてはいけません。


移住者を受け入れることは、単に人口が増えるだけではありません。

移住者を受け入れる姿勢そのものが、これからの福井にとって大事なものになってくるのです。

福井に住んでいる人の多くは、ずっと福井にいる人です。福井で生まれ育ち、福井の学校に行き、福井の会社に就職する。親も親戚も福井の人。そんな人たちが多いと思います。

こういう場合、価値観が似すぎてしまいます。これは危険です。例えば他県の人からすれば顰蹙を買うような「池田暮らしの七か条」を、「正しい」と思うぐらいには、価値観が、認識が、歪んでしまっているというわけです。

これを解消するためには、外の風を入れて、風通しをよくするしかありません。異なる価値観の人と接して、新しい価値観を作り上げていく以外にありません。そうやって混ざり合った価値観のもとでこそ、いろんな価値観の人が、のびのびと呼吸をすることができるようになるのです。

これは、社会が発展するうえで、必ず通ってきた道です。

織田信長は、「人たらし」と評され人心掌握に長けた羽柴秀吉、教養があってプライドが高い明智光秀、猪突猛進タイプの柴田勝家と、性格がてんでバラバラの武将たちを使いこなして、様々な強敵と対峙しながら天下統一目前までいくことができました。これは信長に度量があったからでしょう。有能な3武将は、この人なら、と思って付き従い、その結果織田軍は無類の強さを発揮しました。織田軍の強さは、異なる価値観がそれぞれ生き生きと動ける土壌があったから、と言えるでしょう。

一方で、時代が下った石田三成。彼は優秀な官僚でした。官僚なので、自分の思うとおりに動く組織を作り上げようとしました。優秀な能力を持ち、命令に忠実な部下をどんどん登用し、言うことを聞かないヤツ、できの悪いヤツをどんどん左遷していきました。こうすることで、いい組織ができると目論んでいたのです。しかしながら、彼の作り上げた完璧な組織は、関ヶ原でなんの役にも立ちませんでした。

多くの価値観で構成された組織は強く、一つの価値観のみで作り上げられた組織は弱い。こういう事例は、歴史を漁れば、いくらでもでてくるでしょう。

最初の命題に戻りますけれども、どうして福井が発展しないのか、どうして福井が発展できないのかというと、異なる価値観を受け入れるだけの度量が、住民に備わってないからです

これでは、発展しようがない、というのは、これまで長い間説明してきたとおりになります。




どうでしょうか? 発展と人口増加が切っても切れない関係にある以上、福井の発展のためには、福井の住民の意識改革は絶対に必要だと思うんですけど、はたして、うまくいくでしょうか?

福井の住民は、移住者を受け入れるために、自分たちの価値観を変えていく辛さに耐えられるでしょうか?

福井をよりよい町にしていくために、まずは自分たちから変わろう、と思ってくれるでしょうか?

それとも、福井で金山か石油が発掘されることを期待したほうが、より現実的でしょうか?


最後に。あまり適切ではない例かもしれませんが、最近あったことを、ひとつ。

ある日、私の実家の近くの田んぼに、ゴミ袋が捨ててありました。ゴミ袋の中身は焼肉のたれや、紙皿、コップ、空き缶と、バーベキューのゴミでした。どうも若い人が捨てていったようです。若い人がたくさん移り住んできていることもあってか、最近ではこういうゴミが目立つようになりました。

これを私の父親が拾って、家に持って帰ってきました。「田んぼに捨ててあったわ」とだけ言うと、無言でゴミ袋を開けて、ゴミを分別しつつ、片づけていきました。

移住者を受け入れることは、必ず理不尽が伴います。しなくて済んだような辛い思いも、することになるでしょう。「池田暮らしの七か条」があんな言い方なのは、悪質な移住者に対する、やるせない思いの表れであったのだと思います。

住民は移住者に寄り添って、などと綺麗ごとをぬかしましたが、その実態は、移住者が捨てていったゴミを無言で始末するような、辛く理不尽なことの連続です。

唇を結んでじっと我慢し続けることができる地域が発展し、我慢できない地域が滅んでいくのです。





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