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なぜ福井にはイオンがないのか~本当は怖い福井県~

更新日:2023年2月23日



みなさんこんにちは。八百屋テクテクです。

今回は、「なぜ福井にはイオンがないのか」について話をしていきたいと思います。


ずいぶん前ですが、ツイッターにて、とある画像がバズっていました。

日本全国の隅々までが赤く塗りつぶされ、唯一福井だけが空白となっている日本地図です。

これは何の図かというと、「イオンがある県」の地図だそうです。

画像の投稿者は、単にイオンがある県を塗りつぶしたにすぎないのです。ですが、福井県だけが空白だったために、「イオンのない、異様な県」として印象づけられていました。イオンのない、異様な県。ダジャレじゃないですよ。



「なんで福井には、イオンがないんだ?」



そう思ったひとは、多かったでしょう。

福井県民でさえ、若い人の中には、どうしてイオンが福井にないのかを知らない人が多くなってきました。

歴史というのは、このように風化していくものなのですね。


ない理由はただひとつ。

イオンと、福井県は、過去にバチバチにやり合ったからです。



もともとイオンは、昔「ピア」というショッピングセンターを福井の街中で運営していました。この施設は、イオンと、地元の商業組合が合同で運営する、当時としては珍しい経営スタイルだったのです。

というのも、その当時は、大型のスーパーやデパートが建物を作り、その中にテナントという形で、大小の地元専門店が出店するという形が主流でした。デパートによっては、デパート自体の売上よりも、テナント料が利益の大部分を占める、なんてこともあったそうです。

そんな中、当時としては画期的な共同経営スタイルで運営をはじめた、イオンと福井の商業組合。イオンにとっては、大きな経費のかかる建物の建設費を、商業組合と折半することで軽減できます。また商業組合は合同で、強力なセールや大きなイベントを行うことができます。現に、このショッピングセンター「ピア」は、隣県の石川県も商圏になるほど、勢いが強かったそうです。さながら、今のイオンモールのように。


しかしながら、その後あちこちで、スーパーや商業施設が乱立し、パイの奪い合いがはじまりました。その競争の中で、ピアの求心力は次第に失われていきました。

なんとかしよう、と立ち上がったのは、イオンです。これまでイオンは、ピアの中では、雑貨や日用品のみを担当していましたが、全国的にも大きなスーパーへと成長しつつあったイオンには、食品を含めた小売全体の、最先端のノウハウが蓄積していました。イオンが舵取りをして経営を立て直せば、必ず業績は回復し、それ以上の成長が見込める、という勝ち目がありました。


ところが、それを許さなかったのが、味方であるはずの、福井の商業組合です。

福井の商業組合は、イオンの急成長に危機感を覚えていました。このまま成長を続けられたら、私たち福井県民は潰されてしまう…。雑貨や日用品のみを扱っていた他県の会社が、図々しくも食品にまで手を伸ばしていく姿に、危機感と、嫌悪感を覚えたのです。

この危機感と、嫌悪感は、福井県全体に波及しました。仕入れを担当する卸売会社などに対して、地元の企業は強い圧力をかけました。



「イオンと取引したら、うちはオマエのところと取引しないからな」



雑貨や日用品は、他県から輸送すればなんとかなりますが、魚や野菜など生鮮物は、そういうわけにはいきません。地元の協力なくしては、成り立たないものなのです。

イオンの仕入れ担当者は何度も福井市場に足を運んでみましたが、どの問屋さんも、示し合わせたように、取引をしてくれるところはありませんでした。

従来の顧客を失ってまで、他県企業の、どこの馬の骨とも知れないイオンと、未知数な新規取引をしようとする夢想家は、福井にはいなかったのです。


さすがの大企業イオンも、補給線を絶たれてしまえば、戦っていくことができません。

なんの手も打てないまま、ピアはそのままズルズルと後退していき、ついには閉店、倒産となりました。

そして、ピアの土地に残ったのは、廃墟と化した建物。

ここで地権者が、イオンに対して、建物の解体費用を請求しました。

地権者からすれば、当然の話です。朽ちた建物なんて、邪魔でしかありませんから。



「いや、この建物は、福井の商業組合のものです」



イオンが担当していたのは、もともと雑貨と日用品のみ。建物のほとんどは、福井の商業組合が管理していました。権利関係がどうなっていたのかは外部からは知ることはできませんが、少なくともイオン側は、そう考えていたようです。建物の解体の責任は、イオンにはない、と。

これは裁判となり、長い時間をかけて争われました。その結局、福井地方裁判所は「イオン側に責任がある」との見解を示しました。


福井県民に、利用されるだけ利用され、邪険にされ、後始末まで押し付けられたイオン。



「くそっ、福井め!!」



イオンは、地団駄を踏んだに違いありません。

のちに、新聞各社がイオンの成長を取り上げることがたびたびありました。全国にマーケットを拡大していく中で、福井にだけは意固地に出店しようとしないイオン。これを不思議に思った各社は、「なんで福井には出店しないんですか?」と、上記の騒動を、知ってか知らずか、質問を繰り返しました。



「ビジネス的観点から、出店地域を判断しています」



と、イオンの広報は、その質問が来るたびに、表情を変えずに受け答えしています。

福井の隣の石川県には、イオン系列の大型ショッピング施設が16店舗あります。

またイオンは、今や流通の雄であるという自負から、電気や水道と同じで、インフラとして地元の商業組合と共存し、ともに栄えていくスタイルを採用しています。イオンの社長が、採算を度外視してまで行う地域貢献を、他の役員から怒られる、なんてエピソードまでありました。

こんなイオンの、出店に対する考え方を踏まえると、イオンの広報が発する、福井に対する方針には、冷たいものを感じます。他地域は採算度外視でもやるけれど、福井に関しては、ビジネスで判断します、と言っているみたいに聞こえます。



つい最近になって、約20年ぶりに、福井への出店を決めたイオン。

その裏側にあるのは、福井への親切心か、それとも復讐か……。

流通の裏側にある怨恨と恐怖の物語。これからも目を離せないですね。





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