八百屋テクテク2021年6月23日風待くだもの店~その11~いつから、幻想の世界に迷い込んでいたのだろう? 思えば、風待さんと話をしていたあたりから、どことなく、夢の中にいるような、そんな心地よさがしていた。 あの梅ジュースを飲んだことで、幻想の世界に入り込んだともいえるし、風待さんと話をしている最中に、催眠術をかけられたようにも思...
八百屋テクテク2021年6月23日風待くだもの店~その10~「そうです。僕は、女の子を泣かせてきました」 なんと弁明していいか、わからない。でも、黙っているわけにも、いかなくなった。 どんな表情をして、そう話しているのか、自分ではわからない。 ただ、風待さんは、さっきまでと表情を変えていないように思う。手元の動きは、止まっていたけれ...
八百屋テクテク2021年6月23日風待くだもの店~その9~少年は、歩いた。 岩倉さんは、そこに留まっている。 背を向けた二人の距離が、ゆっくりと開いていく。振り返ることもなかった。 別れてしまえば、たぶん、もう二度と口を聞くことはないだろう。 少年には、表情がない。 自分は、優しい人間などではなかった。...
八百屋テクテク2021年6月23日風待くだもの店~その8~少年は、悩んでいる。 たぶん、この少年がここまで悩んだのは、生まれてはじめてのことだった。 悩みは、ひとを大人にする。大人になりたくなくても、ならないわけにはいかない。 「あのさ、岩倉さん。さっき、誰と恋愛しようが、自由のはず、って言ったよね。今は、それも変わらない?」...