君が歌うスピッツヘタだね、って言われた話


私は歌がとてもヘタです。

かつ、それを指摘されるのが死ぬほど嫌いなのです。

なので、カラオケとか苦手ですし、なるべくいきたくありません笑



高音が出ないんです。

スピッツが好きな男子にとっては致命的ですね。

スピッツなんて、全部高音なんですから。




一度、コーラス部の友人に

「どしたら高音がでるようになるんだ」

ときいたことがあります。

彼は「そんなの簡単だよ」と言いました。




「毎日六時間発声練習すれば、半年ほどでできるようになるよ。その間、ちょっと喉から血がでることもあるけどね」




私は、無理して高音を身に着けることをやめました。

歌手になりたいなら、そのキッツイ練習もしょうがないですけど、八百屋さんとして生きていくのに、高音はそれほど必要ありません。なにも血を吐いてまで身につけるほどのものではなかったのです。






でも、やっぱりカラオケって、人生のどこかで必ず披露しなければならない時があるんですよね。

大学生のとき、バイト仲間と一緒にカラオケに行った時のことです。

カラオケって、採点システムがありますよね。

ひとの歌に点数をつけるという、歌がうまくない人にとっては、とても余計なシステムです。

バイト仲間のひとりで、キャバ嬢みたいな恰好をしたウェーイ女子が


「一番点数の低かった人、カラオケ代おごりねー!」


とか言うもんですから、盛り上がりましたよそりゃ。

みんながノリノリで好き好きに曲を入れる中、私はモジモジして曲を入れずにいました。

手拍子したり、愛想笑いしたりと、なんとかその場をやり過ごそうとしたわけですが、その様子をキャバ嬢に発見されてしまいます。



「ねぇねぇ、君、歌ってなくない? なんか入れなよー?」



彼女は、めっちゃ気を使ってくれたんだと思います。

でも私にとっては、余計なお世話以外のなにものでもなかったんです。

ましてや、全員分のカラオケ代がかかっているんですよ?

そんなの絶対ヤですよ。





でも、ヤだとも言えず。

当たり前ですよね。いったいお前は何しにカラオケ来てるんだ、って感じですし。

カラオケの本を渡された私は、ページをめくりながら、




(とりあえず、スピッツはなしだ……)



とスのページを飛ばして曲を探しました。スピッツなんて歌おうものなら、過去最高の最低点をたたき出す自信しかなかったんです。

とはいえ、スピッツ以外で歌える曲など、それほどあるわけでもありません。私はその時、マジンガーZを入力しました。それはもう、なるべく低い音でも歌えるような曲を探した結果、コレに行き着いたわけです。




曲が始まりました。

私は歌います。

空にそびえる黒鉄の城。




私の歌など、誰も聞いちゃいません。一通り盛り上がった後の、あの気だるい感じが、カラオケの室内に漂っていました。ましてや、選曲がマジンガーZですよ。キャバ嬢をはじめ、ウェーイ系のリア充たちは、誰も乗ってくれません。なんやこいつ……みたいな空気です。




そんな微妙な空気の中、やっと歌い終えましたが、これで終わりではありません。結果発表が待ち構えているわけです。

その場の平均点が80ぐらいで、今のところ70点を出した男子が、オメー歌ヘタだなー! と散々煽られていました。なので、80点代を出すことが、私の生命線となったわけです。

なんとかなれ……なんとかなれ……。

私は、呪いの呪文のように念じました。

デデデデデデ、とドラムロールが流れたあと、バーンと表示された私の点数は……





60点。





まさかの、安全策を講じて、マジンガーZまで歌ったのに、60点!?!?

周りを見渡してみると、誰も画面を見ていません。見て見ぬふりをしているのです。70点を出した男子が散々煽られていたんですが、私の場合は、まったく触れられませんでした。あまりに不憫だったからでしょうか?触れないでいることが、彼らの優しさなのでしょうか。



すぐに、次のひとの番になりました。

とにかく、私の出番は終わりました。冷や汗を一年分ぐらいかきました。どっと疲れました。あとは、全員分のカラオケ代があるかどうか、財布の中身を確認するだけです。




とそこへ、例のキャバ嬢が隣にやってきました。



「ねぇねぇ、君ってさ、スピッツ好きじゃなかった? なんでスピッツ歌わないの?」



「えっ」



「私ききたーい。ねぇねぇみんな、聞きたいよね!?!?」




キャバ嬢の声を受けて、場はウェーイ、とそれなりに盛り上がりました。本当は聴きたいなんて思ってないくせにね。

でもそれはキャバ嬢なりの優しさというか、気遣いとか、そういうものだというのがわかるので、こちらも無碍にはできません。辛いところです。




その流れで私は、もう一度カラオケの本を渡されました。地獄みたいな時間でした。

そして始まりました、空も飛べるはずのイントロ。

幼い微熱を下げられぬどころか、私は逆に血の気が引いて倒れそうでした。

それはもう、地獄みたいな歌になりました。

歌っているほうも辛いですけど、黙って聞いているほうも辛かったと思います。



歌い終わって、またドラムロールが来ました。採点のお時間です。





60点。





どうも、60点以下は、でないようになっているみたいでした。カラオケ採点システムの優しさでしょう。

やっぱりというか、なんというか、微妙な空気感がその場を支配しました。どんまいどんまい、みたいな感じでした。

私はもう針の筵状態で、穴があったら入りたいという気分です。




しかし、隣にいたキャバ嬢だけが、笑ってくれました。



「君さ、スピッツへたくそだね!」



死体になった私に、さらに刃を突き立ててくれたわけです。

こんなわけで、私は、もうカラオケには絶対行きたくないわけです……。






私のカラオケ人生は、現在進行形で雨降り続いてます。あじさい通りです。


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