八百屋さんがスピッツの曲に思うこと



自分の気持ちを表現するのって、すごく難しいんですよね。

とくに歳を重ねてくると、そう思うようになりました。



社会人として生きていくためには、まわりに歩調を合わせて、迎合しなくてはいけません。

「みなさんと考えていることは、同じです」という姿勢をとらないといけません。

家庭をもてば、言いたいことの一つや二つ、飲み込むこともあるでしょう。

それがうまくやっていくコツだと言われれば、その通りです。

自分の小さな正義を通したいために、大きく歩調が乱れる、なんてことがあると、全体に迷惑がかかります。

実際、小さな正義にこだわるより、黙って歩調を合わせた方が、結果としてうまくいくこともあります。

だから、それを理由にして、自分の正義を封印して生活をしていくうちに、自分の言いたいことをうまく言えなくなってしまう。

自分の正義を通して反発を招くより、全体の雰囲気に黙ってしたがっていたほうが、楽に生きられます。



楽に楽に生きて。

自分の心の中の正義に蓋をして。

流れに逆らわずに生きていく。



昔は、「上司に逆らえ」とか「正義を貫け」とか「やりたいことをやれ」とか、

そういうのがもてはやされました。

まあ今でも、ユーチューブのビジネス界隈では、こういう動画がもてはやされたりしています。

動画投稿者に、若い情熱を感じます。その動画をみてコメントをしている方にも、情熱を感じます。

でも、実際に行動に移すひとは、ごく一握りでしょう。

今は、どの時代よりも、周りの雰囲気を読む時代だと感じます。周りをすごく気にして、周りと同じ格好をして、周りと同じことを考え、周りと同じ行動をすることを心掛けているひとが大半なのではないのでしょうか。

ひとと違うことをすることを恐れている、とも言えるでしょう。

そういう、情熱的な動画に共感をするものの、実際に情熱に忠実に行動できるひとは、まれです。

たいていの人は、次の日会社の会議で、とくに何も発言せずに終えることになります。



でもそれは、悪いことばかりではありません。

それどころか、正解だと言えると思います。

普通でいることに一生懸命になることもまた、立派で誠実なことです。そういう人間こそ信頼されるのだと思います。

はみ出さず、周りに気をつかい、同調する。これができるひとは、立派な大人です。



でも同時に、失うこともまた、当然あります。

自分に生まれた、他の人との差異。これを表現することが許されないのです。

こういう場合、このこみあげてきた感情は、どのように処理すればいいのでしょう??



私は、この気持ちを表現することを避けてきた結果、表現するのがとても苦手になりました。

いや、もともと得意だったわけではありませんが、何かを言おうとしたとき、うまく言えない自分に気が付いたのです。

「まあ、いいや。ここで私が何かを言うより、黙っているほうが楽だし」という気持ちが、より私の口を閉ざします。





前置きが長くなりましたが、

スピッツの音楽というのは、この、どこにも行けなくなった自分の感情を、昇華してくれる役割があると思っています。

スピッツの曲の土台となっているのは、どこか重苦しい、居心地の悪い世界です。

「限りある未来を搾り取る日々」「狂った今を生きていこう」「渡れない濁流を前にして座って考えて闇にはまってる」

こう、表現された世界というのは、明日食べるものがないとか、ミサイルが飛んでくるとか、そういうとんでもない絶望ではありません。

一見平穏な日常を生きているように見えて、どこか歪んでいる世界。自分と世界の間には、ちょっとした溝があって、うまく生きていくことができないでいる苦悩を語っているようです。



スピッツは、昨今のビジネス系ユーチューバーのように、「正義を貫け」とか、そういうことをおすすめしてきません。

誰かと対決して、相手を打ち負かし、自分の思い通りに場を支配する。そういうことをすすめてきません。

でも、かといって、「我慢して今の状況を飲みこもう」とか「それが大人なんだし仕方ないよね」とも言っていません。

では、どのような指針を立てているのか、と言われると、答えようがないのですけれどね。

こうするといい、ということは、たぶん言っていなくて。




どうすればいいのか、という問いに対する答えは、たぶんスピッツの曲の中にはありません。

それは自分自身の中で、なんとかして見つけ出していかなくてはいけません。

でも、その、なんとかして、の期間、ずっと傍らに居続けてくれるのが、スピッツの音楽なのだと思います。

どういう自分になろうとも、たとえ失敗しようとも、自分を肯定しつづけてくれる存在。そういう優しさが、スピッツの曲にあると思います。


「海を見に行こう」とか

「こんにちは」とか

「歌ウサギ」とか

「小さな生き物」とか


挙げればキリがないですけれど、

こういう曲たちに、昇華させられている感情というものが、確かにあると思います。


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