
八百屋テクテクの店主は昔、スーパーの青果部門で修行してました。
スーパーですから、いろんな部門があるわけでして、
魚屋さん、豆腐屋さん、牛乳屋さんなど、いろんな専門家がいました。
私が25歳まで働いていたスーパーでは、若い人で部門責任者やってる方が多くて、
若くしていろんなチャレンジを一緒にしていた時期でもありました。
全国でも有名なスーパーともなれば、コンビニなどと同じく強力なトップダウンが敷かれているので、どこのお店に入っても同じ色、同じサービスが基本です。優れたマニュアルが作られていて、それを現場に守らせるのが本部の役割です。本部が命令し、現場はマニュアル通りに動く。これが大企業の条件といえます。大企業病とも揶揄されますが、組織が大きくなるためには必要条件であると言えるでしょう。
しかしながら、私が働いていたスーパーは、まだまだ発展途上でした。
現場が自分の頭で考えて、結果を出せば評価される。チャレンジさせてくれる。
そんな雰囲気がありました。
そのスーパーの魚屋さんや肉屋さんは、かつて福井県内のスーパーの中では、どこよりも優れた技術をもって、どこよりも美味しい食材を、リーズナブルな価格で提供してくれていました。
そんなスーパー時代の、今でも付き合いのあるお肉屋さんの友人がいます。
精肉部門で10年以上肉と向き合った、精肉の大ベテランです。
ちょっと込み入った話になるかもしれませんが、スーパーの精肉部門の人というのは、大企業のスーパーであればあるほど、肉を切ることができない人が多いんです。なぜか。お肉は精肉工場で機械でカットされ、パックに詰められた状態でスーパーに納入されるからです。あとは納入されたパックを並べるだけ。何をどれだけ発注するかが、スーパーの精肉部門の仕事なんです。
でも、友人のお肉屋さんは、ちゃんと肉を切ってきた人です。
肉のカタマリから、毎日スライス肉を切り分けてきた人です。
肉と向き合い、どんな肉がいいか、悪いかを、ちゃんと自分の目で確かめてきた人です。
この友人の同僚で、もう定年を過ぎてしまった人がいたのですが、
このお爺さんは、まるまる牛一頭を解体していました。
刃渡り30センチはあるであろう肉切り包丁を研いで、10センチのカッターナイフになるぐらいまで使い込み、それを長い精肉人生の中で3本も使い切ったそうです。
10センチのカッターナイフみたいな刃渡りしかなくても、20キロの肉のカタマリちゃんと解体できるのは、熟練した人間の不思議だと、その友人はいいます。
これが、技術なんですね。
システマチックな世の中なので、こういう職人さんは減ってしまいましたが、
この友人は、同僚のお爺さんと一緒に働くことで、こういう技術を継承しました。
でも、この友人は今、肉屋さんにいません。
退職して、今はカフェで働いています。
つとめていたスーパーが、大企業化したからです。
どんなパックがどれだけ売れるかがわかる商人が会社にとって必要であり、昔ながらの、肉が切れる職人は必要ではなくなりました。
肉は、機械が切ってくれますからね。
変革のなかで、ついていけなくなった人は、置いていかれます。
この友人もまた、10年以上育てた肉を切る技術には未練はまったくないようで、
今日も嬉しそうにコーヒーを淹れていることでしょう。
いや、もともとコーヒーが好きだったので、もし今の職場に先に出会っていたなら、
最初からコーヒー屋さんとして生きてきたかもしれません。
何が正しくて、何が正しくないかとか、
それは時代によって変わっていくものでしょう。
ただし、正しさの反対側には、必ずもう一つの正しさがあるものです。
捨てられてきたものの中に、失ってきたものの中に、大切なものがあったとしたら。
それに私たちは、いつ気が付くのでしょう?
肉の知識、野菜の知識。
それを意図的に捨てようとしているのが、今の世の中の仕組みです。
安全安心を謳っているけれど、その言葉を大きな声で世の中に向かって投げているのは、肉の切り方も知らないサラリーマンであり、野菜と泥にまみれたことのない、スーツを着て冷房の効いたオフィスで企画を練る人です。
私は、野菜やお肉を買う時には、その技術を買いたいと思っています。
私は八百屋さんなので、野菜を見れば、その向こう側にいる農家さんの技術量が見えます。
同じく、お肉を見て、どんな肉かを判断できるお肉屋さんから、お肉を買いたいです。
お肉屋さんは、アメリカ産の安いアンガス牛の良さを知っています。
同時に、悪い所も知っています。
国産牛のいい所も知っていますし、悪いところも知っています。
どちらも、良い部分だけを取り出して、エッセンスにできる。
これが技術だと思っています。
美味しいお肉、いただきました。
ご馳走様でした。

★ネギたっぷりマーボーナス
★スイートコーン
★夏野菜サラダ
★黒瓜の塩もみ
★ごはん

先週のモーニングは、カフェオレフレンチトーストでした。
濃い目のコーヒーがいい感じでした!
高松デラウエアもかなーり美味しい!
