なんで野菜高いん? 余ってるって言ってたやん??



今、野菜高いですよね。

安いものもありますが、高いものも多い印象です。

ざっと見てみても、この時期にはなくてはならない、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、キャベツ、ブロッコリー、こかぶ、ねぎ。果物は、輸入オレンジや輸入グレープフルーツ、ぶどう類など、主に輸入物が高騰しています。



一方で「コロナで農産物が全然売れないから、畑でみんな捨ててる...」みたいなニュース、あちこちで聞きます。

実際、農家さんを回っていても「買取価格がめっちゃ安いから、捨てた方がマシ」みたいな話をききます。



みなさん不思議に思いませんか。

普通、買取価格が下がったら、小売価格も下がるはずです。

逆に、上がったら、上がるはずです。

それなのに、なぜか買取価格が下がっているのに、小売価格は上がっているのです。



これ、実はめっちゃ面白い話なので、ぜひ聞いてもらいたい話なんです。

流通って、生き物なんだな~、ということがよくわかる話です。

流通って、ただトラックで右から左へと商品を流しているわけじゃないんです。

この話を通じて、普段は裏に隠れてよく見えなかった流通のことが、よく見えるようになってくるかもしれません。



わかりやすいように、品目を絞って話をすすめましょう。

輸入オレンジを例にします。



オレンジは、コロナの影響をモロに受けている作物です。

オレンジは、他の果物と比べても、飲食店やホテルなどで消費される量が圧倒的に多い果物です。

なので、今、市場でめっちゃ余っている果物です。



でも、大安売りしているスーパーさんは、あまりみかけません。

「ふーん、私安くないわよ、それでも買うの?」みたいな顔して、売り場に居座っています。

私は八百屋さんなのでわかりますが、卸値が下がれば、安くして売りたいと思います。みんな思うはずです。

でも、卸値が下がっているわけではないんです。むしろ例年と比べても高いです。



オレンジは、輸入品です。

輸送船に沢山乗せて、アメリカからやってきます。

受け入れ先の市場Aの倉庫がパンパンになります。さー売るぞ! と意気込んではみたものの、今年はコロナの影響であまり売れません。

1週間、2週間たっても、例年の半分も捌けません。次の便がやってきます。さらに次の便もやってきます。農産物はすでに収穫済みで「もういらない」と宣言したところで、止めることはできません。農家さんとの約束なので、必ず買取をしなくてはいけません。



困り果てたA倉庫のもとに、別の市場の問屋さんBから注文がやってきます。



は~やっと売れた~、とAの担当者は、一番古い在庫を出荷します。

何週間も倉庫に居座った果物です。当然痛んでいます。



問屋さんBはこう思います。「なんじゃこりゃ?売り物にならんやんけ!」

BはAに抗議します。「もっといいものと交換してくれよ」

でも、古いものから先に処分したいAは「あ~みんなそんな感じだから。安くするから我慢して」というしかありません。



「うーんしょうがないナァ……」というやりとりを経て、痛んだオレンジが回ってきた問屋さんB。これをスーパーCに売りつけることを考えます。

「Cさ~ん。安いオレンジがあるんだけど、買わない?」

「おっ、いいね、ちょうだい」

「あいよ!」



と、これまた大量の痛んだオレンジが送り込まれたスーパーCは、悲鳴をあげます。

「こんなん、売れへんでぇ~~!!」

嘆いても、どうしようもありません。とりあえず売れそうなものだけ売り場に出してみることに。

するとオレンジを買ったお客さんから、大量のクレームが! 「ひえ~、もうコリゴリだ~!」

CはBに抗議をします。C「なんでこんなに悪いんだ?」B「いやぁ、なんか今年はあんまりオレンジ良くないんスよ」C「そうか。じゃあ今年はオレンジを買わないわ」



この経験を経ると、問屋さんBと、スーパーCは、こう考えます。



「今年はオレンジの品質が悪いから、安いものに飛びついて特売をするとクレームになる。それよりも、ある程度品質のいいモノを高く売った方がいい」



ということで、BとCは、高品質なオレンジを求めます。さて高品質なオレンジはどこにあるのでしょう?そうですね。Aの倉庫の、一番奥にあります。

Aだって、今ある在庫よりも先に出したくはないですから、出し渋ります。少しでも古いオレンジに視線が向くよう、新しいものにはとんでもなく高い値段をつけて、差別化を図るかもしれません。とにかくここで「安く大量にある痛んだオレンジ」と「少なくて高い新しいオレンジ」の二つが生まれます。



Cは「とりあえず高くてもいいから新しいオレンジが欲しいわ」ということで、Bに依頼します。CとBの中では、安く大量にあるオレンジの需要がなくなり、少なくて高いオレンジの需要が高まります。



これが、全国的な規模で発生すると、不思議なことに、高い、もとい、新しいオレンジの奪い合いが起き、価格の高騰が起きるのです。上ではABCという単純な構造にしましたが、本来はCDEFGなどと、もっと多くの問屋さんが入り込んでいて、それぞれが内部事情を漏らさないようにしています。「古いオレンジが大量にあるから、新しいオレンジを隠している」なんてことは口が裂けてもいいません。スーパーの店員さんだって「いやぁ、本当は冷蔵庫に新しい野菜あるけど、売り場の古いやつを売らないといけないので、さきに古い方を買ってください」なんてお客さんに言いませんよね。



同時に、安いオレンジの取り扱いについては、とても敏感に、消極的になっています。たとえAがいいオレンジを安く提供しようとしたとしても、前科があります。

ただでさえコロナの影響があるのに、品質の悪いオレンジを引き受けるリスクを冒してまで、特売をするでしょうか。




大量にあるけど、ない。

これが、余っているのに、高い、の真相です。




一番最初に言ったラインナップを思い出してみてください。玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、キャベツ、ブロッコリー、こかぶ、ねぎ。どれもある程度日持ちがする野菜です。

本当は、たっぷり収穫されています。問屋さんの倉庫の中にはたっぷり積みあがっているはずです。

ところが、スーパーさんが特売をしようとすると、決まって古いものが送り込まれてしまいます。それー!在庫を減らすチャンスだ!とばかり、古い在庫を放出しようとするからです。

在庫を持っているのが苦しくて、誰かに投げたい気持ちはわかりますが、押し付けられたほうはたまったものではありません。

頑張って売ろう、という気持ちが冷えてしまいます。みんなで疑心暗鬼になって、探り探り、発注をしています。この冷えた気持ちが、小売店の売り場に反映されてしまうのです。



どうですか? ここまで考えると、流通は人の気持ちが反映されているものだということが、わかると思います。

まさに生き物です。生き物のように蠢き、コントロールすることは不可能です。

同時に、この流通の仕組みに、人間の営みのようなものを感じられて、とても面白いと思います。





89回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示