高校生の時の話です。
その頃発表されていた統計調査(?)では、交際経験のある高校生は半数にのぼっていました。
でもたぶん、それは都会の高校生の話でしょう。
福井の田舎では、交際したことある人なんて、数えるほどしか見当たりません。
少なくとも、私の周りはそうでした。
もっとも、私のまわりだけお付き合いをしたことのない連中ばかりで、実はほかの男子たちはコッソリと交際をしていたのかもしれませんが。
私は何の特徴もない、一高校生として、波風の立たない、群衆の一人として存在していました。
ひとの邪魔にならぬように、生きてきたわけです。
こういう男子に、女の子が近寄ってくることなんてありませんでした。
だって、魅力がないんですからね。
ですが、
「彼女が欲しい!」
という想いは、それなりにあったわけです。
たぶん、スピッツに触発された部分が大きいと思います。
誰も触れない二人だけの国にいきたいわけですよ。
「愛してる」の響きだけで強くなりたいわけですよ。
本当はちょっと触りたいわけですよ。
とはいえ、
だからと言って特に行動を起こしたわけでもありませんでした。
どうしたらモテるようになるのか、など、特に考えもしませんでした。
ただ、「彼女が欲しい、彼女が欲しい」と事あるごとに、呪文のように唱えているだけでした。
そんな私の妄言を聞かされていた友人のひとりが、たまりかねて、私にこう言いました。
「オマエは、いっつもいっつも彼女が欲しいと言っているけど、彼女ができたとして、いったい何がしたいんだ」
「えっ」
私は、返答に困りました。
そういえば、お付き合いを始めたとして、その先のことは全く考えていなかったのです。
いや、そもそも、恋とは、そういうものではないと思っていたのです。
お付き合いを始めれば、新しい感動に触れることができる。
日なたの窓で、君に触れたい、それだけでいい何もいらない瞳の奥へぼくを沈めてくれ。
って、スピッツも言ってました。
恋をして、その先に何かがあるものではなく、恋そのものが目的なのです。
そういうものだとばかり、考えていました。
だいたい、恋をして、その先で何をすべきなのでしょう。
「異性との交際は、高校生という自覚をもって、清い交際を……」
って、生徒手帳にも書いてありました。
そういう規則がある以上、それ以上のことができないだろう。
と、ルールをはみ出すことを知らなかった高校生当時の純朴な私は、そう考えていました。
ですが、
そうスラスラと思ったことを言えるほど、器用ではありませんでした。
私は悩んだ末、こう答えました。
「彼女と一緒に、旅に出たい」
「はぁ? 旅ぃ?」
「そう。好きな人と一緒に、同じものをみて、同じ経験をして、同じ感動をしたい」
こう伝えるのが精いっぱいでしたが、彼には納得してもらえませんでした。
「おかしなヤツだな。オマエは、旅をするために彼女を作りたいのか」
そう言って、彼は笑ったのです。
彼がそう思ったのも、無理はありません。今なら私だって、他人がそう言っていたら、笑うに違いありませんから。

旅人になるなら今なんだ~!