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川合農園様


「記事にしてもらえるのなら、

うちはゆるーくやってきているから、ゆるーくやってます、

って感じで紹介してちょうだいね」

 


窓からさんさんと秋の陽が差し込む、明るい雰囲気のカフェ。

カウンターの向こう側にいる川合さんはニコニコ笑いながら、

私にそう要望しました。
私は、この記事を書くため、

川合さんが経営なさっているこのカフェを訪ねました。

でも川合さんには、ゆるーくと言いつつも、

落ち着いてゆっくりしている暇がありません。

こうしている間にも、電話はリンリン鳴りますし、

お客さんも訪ねてきます。

それを、慌ただしくもにこやかに対応している川合さんに、

とても強いパワーを感じます。
注文したリンゴジュースを、本当にゆるーくすすっていた私に、

川合さんは、ビーツのスムージーまで振舞ってくれました。
このビーツが、甘くて美味しいんです。

 


「ビーツがとても美味しいですね」

 


「そうでしょう? 野菜がすごく美味しいカフェって、

すごくいいでしょう? 

このビーツは、自分たちで作った野菜だからね。

自分たちで食べるために作った安心安全な野菜を、

カフェで食べられる、っていうのが、このカフェのコンセプトなの」

 


「なるほど。最近では野菜にこだわったカフェ、増えましたね。

時代が、美味しい野菜を求めてきつつあるのかもしれません」

 


「そうよねぇ。うちは、特に時代とか需要とかを

意識してたわけじゃないけど、言われてみれば、

本当にそういうカフェ増えたわね~」



野菜へのこだわりを謳った他のカフェは、

農家さんなどから直接仕入れた、

こだわりの野菜を使用しているところがほとんどだと思います。
その点、川合農園さんのカフェは、さらにもう一歩進んで、

自分たちで作った野菜を使っています。
いや、そもそも、川合さんは、

八百屋さんとして活動している期間のほうが長く、

川合さんのことをカフェのオーナーとしてではなく、

むしろ八百屋さんとして認識していらっしゃるお客さんも

多いのではないのでしょうか。
この時私がお邪魔していたカフェは、

まさに川合さんが経営するカフェだったのですが、

このカフェがオープンしたのが約1年前。

八百屋テクテクとほぼ同じ時期です。

一方、八百屋さんとして、

ワゴン車での野菜の移動販売を始めたのは、

かれこれ18年前になるそうです。

18年といえば、私が青果に携わってきた年月の、ほぼ倍にあたります。
ですので、私もまた、川合さんといえば、

野菜の移動販売がメインで、カフェはサブ、のように、

どことなく思い込まされていました。

移動販売とカフェの年季の違いもそうですけど、

川合さんの底なしの明るさも、

そう思わせる材料だったように思います。

川合さんは、内に籠ってのんびりお客さんを待つタイプではなく、

積極的にガンガン外に出てバンバン売ることができる、

元気さと明るさを持ち合わせていたからです。

 

 


では、この元気さと明るさで、みなさんにいい野菜を届けたい、

美味しい物を食べてもらいたい、

という目標に向かって突き進んできたのですね、

と尋ねると、川合さんは、元気に笑って、

いやいや、と手を振りました。

 


「八百屋さんとしての活動も、最初は、ほうれん草10把とか、

絶対に売り切れる量から始めたの。

だって、売れ残ったらどうしよう、って考えたくないじゃん。

そうやってゆるーく始めた八百屋さんだけど、

未だにその方針は変えてないの。

いつも売り切れる量だけをワゴン車に詰めて、販売しているわ。

カフェをやりたい、っていうのも、

実はそれほど強く願っていたわけじゃなくて、

やれたらいいなー、ってぐらいかな。

私、美術の先生の資格があるから、

途中で学校で美術の先生もやりはじめたし。

その二年前には家を建てることになって、

せっかくだからカフェもやってみるかー、っていう感じで、

カフェもやってみることになったの。

だから今では農業と、八百屋さんと、学校の先生と、

カフェとを掛け持ちしてやってるのよ。

まあ、そりゃあ元気がないと

こんなに掛け持ちできないのは確かだけど、

でも自分では、そこまで根をつめてやっているつもりもないのよ。

農業は、夫がこだわりもってやってくれているし、

カフェは、お店を任せられるスタッフもいてくれるしね」

 


「あくまでも、そういう意味で、ゆるーく、

自然な成り行きに任せている感じですか」

 


「そうそう! ゆるーく、成り行きで、よね。

なんでも楽しくやれたら、それでいいかなー、って。

でも、こうして自由にやらせてもらえているし、

八百屋さんを待っていてくれるお客さんもいるし、

お店に来てくれるお客さんもいるし、

信頼できるスタッフと一緒にやらせてもらえてるし、

本当にありがたいなーって思うわ」

 


根底にあるのは、成り行き任せにできる心の自由さと、

それを楽しむ明るさと、元気さ。
この川合さんの持ち味が、

川合さんの野菜の美味しさにも現れていると私は思いますし、

私と同じように思っているお客さんも多いのではないのでしょうか。




川合さんのファンは多いのですが、その理由は、

川合さんの元気さと、安心安全な野菜を届けたいという、

川合さんの想いにあります。

 


「川合農園として扱っているのは、

かぶ、トウモロコシ、大根、水菜、はくさい、ケール、アスパラ。

あと変わったところだと、

おいしいな、とか、ラディッシュなんかもあるわ。

それに加えて、近所の農家さんや知り合いの農家さんで、

私たちと同じように無農薬もしくは低農薬で育ててる農家さんの

野菜を仕入れさせていただいているのよ。

川合農園の力だけでは、野菜の種類に限界があるので」



もし、無農薬、減農薬の美味しい野菜をお求めでしたら、

そういう方針で作っている農家さんを探して、

直接買うのが一番理想的です。
なぜか。
直売所やスーパーですと、最近では、

こだわり野菜に関する取り扱いは増えつつあるように感じますが、

無農薬、減農薬に関する取扱いについては、

まだまだ発展途上のように思えます。

このコーナーの野菜は無農薬、減農薬で作られています、

という明確な区切りをしているところはほとんど見かけません。

かと思えば、なんの表記もない野菜が、

実は無農薬、減農薬で栽培されたものだったりするんです。

 


いや、そもそも野菜というのは、

農家さん一人ひとりで栽培の方針が違いますし、

なにより土壌や気候も、同じ県内でも大きく違います。

そうなると、使用する肥料や農薬もガラリと変わります。

使わなくていい時期もあれば、

絶対に使わなければならない時期もあります。

なので、この農家さんのこの野菜は無農薬だけど、

同じ農家さんのこっちの土地で作られたこの野菜は

農薬使用してますよ、

あっ、この野菜は今まで無農薬でしたが、

時期が変わったので農薬使用してますよ、

なんてことになるわけです。
この状況では、小売店側に正確な表記を求めるのは、

限界があるのです。


(細かいことを言えば、無農薬、減農薬という表記自体、

どの期間無農薬なのか、

どのくらい減らしているのかなどを細かく説明できなければ、

表記してはいけないことになっています。

なので、無農薬、減農薬表記に対するハードルは、

販売側においてとても高くなっています)



そういった状況があるので、

もし、少しでも農薬の少ない野菜を求めようと考えた場合、

一番確実なのが、そういう方針で栽培している

農家さんを探すのが確実だというわけなのです。

 


また、川合さんから野菜を買うということのメリットは、

農薬使用の有無がわかることだけではありません。

直売所やスーパーですと、単純に、

野菜を仕入れてからお客さんの手に渡るまで、

ある程度時間を要してしまいます。

いくら無農薬のいい野菜でも、

時間がたってしまえば値打ちも半減してしまいますからね。
そういう意味でも、農家さんと顔見知りになって、

どういう野菜を作ってるか、どういう野菜が欲しいかを意見交換して、

そこで納得した農家さんから直接買うというのが、

本当に理想的な野菜の買い方だと思うんです。
川合さんは、移動販売でお客さんと顔を合わせることで、

それを自然と行っているわけです。

また、農家さんとの窓口にもなってくれているわけです。


「社会的な貢献をしたいとか、

そういう大げさなことを考えていたわけじゃないんだけど」

と前置きしたうえで、川合さんは続けます。

「小さなお子さんをもつママさんって、

やっぱり子供にいいものを食べさせたいでしょう? 

自分が子供を育ててるときは、すごくそれを思って。

私と同じように考えているママさんたちって、多いんじゃないかなって。

もちろん、ママさんたちだけではなく、

安心して食べられる野菜を求めている人って、わりと多いと思うの。

そういう人たちに、私たちが無農薬、減農薬で作った、

野菜を届けたい。安心安全を届けたい。

それが、私が野菜の移動販売を続ける理由かな」

 


終始、笑顔でお話をしてくれた川合さん。
川合さんの元気さが、元気な野菜を作り、

それを食べてまた元気になる、という循環を続けているのだな、

と私は彼女の話ぶりを見ながら、感じました。